地域主義、地産地消を強調する「フード左翼」のリスク

少々古い記事になるが、日経ビジネスオンラインの2013年12月27日付け記事「有機野菜好きは『サヨク』なんですか?」に以下のような一節がある。

地域主義、地産地消、自然派食品などにこだわる人々を左に置いて「フード左翼」と定義しました。対して「フード右翼」は現実主義者に相当します。第一義には、グローバルな食の流通や、産業化された食のユーザーということになります。

日経ビジネスオンライン「有機野菜好きは『サヨク』なんですか?」 より

その意味では、どちらかというと「フード右翼」側を支持したい。福島原発事故の後、原発事故のフォールアウトがあった地域の人が意外と放射性セシウムを取り込んでいなかったのに驚いたことがある。献立調査でも放射性物質が意外と検出されなかったのに驚きつつも安堵したものである。

チェルノブイリと大きく違う結果になったのは、ロシア人やウクライナ人のように森の産物を多く摂取するライフスタイルと、全国、全世界的に流通するものを多く食べていて、汚染地域の森林の産物を多く食べなくても暮らしていけるという日本人のライフスタイルの間の差が大きいのでは、と当時考えていた。つまり、全国、全世界的な流通に依存する食生活がリスクヘッジになったのではないかと考えたのである。

事実、福島のみならず茨城や栃木でもキノコやイノシシのような森の生き物はそれなりの放射性物質を溜め込んでしまっていたので、ツイッター上では「食べてはいけない」という啓蒙活動が行われていたのを記憶している。また、東大の早野教授のように「イノシシのような食生活をしてはいけない」とも警告する人も居た。

「フード左翼」のように地域主義、地産地消が行き過ぎると、非常時にはリスクを抱えることになる。食材が広く流通することはある意味でリスクヘッジになるということを福島原発事故は教えてくれたように思う。