安倍政権は集団的自衛権行使容認と防衛費増額に集中すべし

WEDGE Infinity(ウェッジ)の岡崎研究所による2013年08月19日付け「『日本は過去の修正より未来の政策に優先順位を』の落とし穴」という記事に次のような一節がある。

自由民主主義国において、政治指導者が、この歴史認識が正しくこれは間違っているなどという立場にはないと考えます。戦後70年もたったので、復讐の激情を離れて冷静に考えられることを期待します。勝者がすべて正しく、敗者がすべてにおいて悪いなどと言うことがあろうはずはありません。

WEDGE Infinity(ウェッジ)「『日本は過去の修正より未来の政策に優先順位を』の落とし穴」より

日本人としては全く同感だが、世界にそれが通用するかと言うとそれは無理だと思う。第二次大戦によって作られた枠組みをリセットできるのは新たな世界大戦しかないというのが人類の現実であり、第三次世界大戦が起きるまでは戦勝国にとっても敗戦国にとっても永遠に戦後が続くと考えざるを得ない。特に中華人民共和国の場合、戦勝国としての立場を中華民国から奪い取って国連の代表権と常任理事国の地位を得たとの経緯があり、戦勝国としての地位を振りかざすのに何の躊躇いも無い。そして、それは米国においても一定の効果をあげ続けている。その尻馬に乗っているのが韓国だが、不快ではあるがそれを阻止する方法はおそらく存在しない。

従って、第三次世界大戦が起きて中華人民共和国が新たな敗戦国になるようなことでも起きない限り、日本は第二次世界大戦に負けたのだと言うことを対米、対中、対露関係において十分留意した上で行動し、いたずらに虎の尻尾を踏んで回るようなことを慎まなければならないのが日本の現実であろう。

同じ岡崎研究所の手になる2013年8月20日付記事「ワシントンポストとウォール・ストリート・ジャーナルに見る『安倍内閣に望むこと』」に

防衛費を増額し、集団的自衛権を認め、ガイドラインと防衛計画の大綱を見直すことは、中国にとって、最も不利なことであり、あらゆる手を尽くして妨害すべき対象です。しかし、これは米国の国益と全く一致するため、中国としては反対する余地はありません。

反対する方法があるとすれば、それを日本の右傾化の一部と捉え、アメリカの中の一部リベラルな分子、および第二次大戦中の旧敵国の感情に訴えることです。上記の二つの社説を見るだけでも、その工作が少なからざる効果を持つことが予見されます。

WEDGE Infinity(ウェッジ) 「ワシントンポストとウォール・ストリート・ジャーナルに見る『安倍内閣に望むこと』」 より

との指摘があるが、全くその通りなのが現実である。従って、現在も近未来に於いてもまだまだ第二次世界大戦後という状態は続くのだというに十分注意した上で、安倍政権は同記事にある

日本の戦略的選択は明らかです。すなわち、靖国参拝、河野談話、村山談話の見直しなどは、後回しにして、まず集団的自衛権行使の容認と防衛費の増額に集中すべきです。

憲法の改正はその両方に関連する問題ですが、集団的自衛権の行使は、本来、憲法の改正を必要としません。また、右傾化の国際的批判を避けるためにも、両者は切り離すべきです。

WEDGE Infinity(ウェッジ) 「ワシントンポストとウォール・ストリート・ジャーナルに見る『安倍内閣に望むこと』」 より

という指摘のとおり、集団的自衛権行使の容認と防衛費の増額に集中すべきと考える。本当なら、最高裁が行政訴訟で自衛隊違憲、日米安保違憲、すべての軍事協力は違憲という判決を出さないようにするためにも憲法9条第2項は廃止しておいた方が良いと考えるのだが、戦後体制変革を狙っていると受け取られる副作用を考えると、仕方がないと考える。

その防衛費であるが、台湾がGDPの3%を防衛費に充てていてなお戦力の不足に悩んでいることを考えると、日本がGDPの1%未満しか防衛費に使っていないのは実に頼りなく思える。東日本大震災のときに50代の尉官や佐官を酷使しなければならなかったほど自衛隊の人員構成は陸士・海士・空士の不足(もしかすると曹も足りないかも)により歪んでしまっており、有事の際に備えた弾薬の備蓄も実に心もとない。防衛費の増額は自衛隊の人員構成の歪みの是正と継戦能力向上のための備蓄に当てるのに十分なものであって欲しいと切に思う。