人口オーナスに対し姥捨てという禁じ手を使いかねない中華人民共和国に対する危機感

日経ビジネスオンラインの2012年11月30日付け記事「『解決不能な高齢化』が中国を襲う」に次のような一節がある。

高齢者「見殺し」で成長を維持

結局、公(おおやけ)が農村の「人口塊」の人たちに介護サービス、そして医療サービスを提供する必要がでます。しかし、農村の「人口塊」の数はあまりに膨大で、都市は彼らの生活を支えるのに十分なおカネを提供できない可能性があります。

豊かになった上海や北京の人口はそれぞれ2000万人前後です。内陸部の都市をかき集めても、農村を支援しうる都市人口の合計は、3億人に満たないでしょう。その力で残る10億人の地域の、深刻化する一方の高齢化を支えるのは事実上不可能です。

鈴置:医療サービスなどを十分に提供しない――。つまり、病院に連れて行けば助かるはずの、農村の「人口塊」を見殺しにしていくということですか。ある意味で「姨捨」ですね。

大泉:そういうことです。

鈴置:ということは、現在、予想されているほどに中国は高齢化しないかもしれない。高齢者を「姨捨」していくわけですから。となると、日本の一部にある「高齢化による成長鈍化で、中国の軍拡に歯止めがかかる」という期待も空振りとなるわけだ。

軍艦か平均寿命か

大泉:ええ、「農村での平均寿命が予想ほどに高くならないので、中国は相当な程度の成長を今後も維持できる」と見る人も多いのです。でも、それは国家の敗北です。手当てすれば生存できる国民の命を政府が見放した結果ですから。

鈴置:「平均寿命を延ばすか、軍艦を増やすか」の選択を中国の指導者はいずれ下す、ということですね。直感的には中国は後者を選ぶ気がします。人権意識が薄い国だから「手当てしない」ことが問題にはなりにくい。直接、政府が手を下して殺すわけでもない。不作為の作為によって高齢者を「減らす」のですから。
要するに、老人を見殺しにすれば人口オーナスなど怖くない、という身も蓋もないオプションが中華人民共和国政府には残されている、と言うことになる。もし中華人民共和国がこんな無茶苦茶な人道無視が出来る国なのであれば、世界中のいかなる国もこの国には勝てない。

日経ビジネスオンライン「『解決不能な高齢化』が中国を襲う」より

しかし、断じてこのような国に滅ぼされるわけには行かない。さりとて、日本もその真似をして、不作為によって老人に死んでもらうと言うわけには行かない。そんなことをしたら大泉氏の言う「国家の敗北」になってしまう。

それでは、「高齢者見殺しによる人口オーナスの回避」という禁じ手を使ってくる可能性のある中華人民共和国に対し、日本が滅ぼされないようにするためには何が出来るのだろうか。

まず、実質的な生産年齢を可能な限り上方に引き上げることである。75歳まで現役で働いてもらうために、定年制が憲法違反になるような憲法改正を行い、アメリカ合衆国のような「生涯現役社会」を法制化し、年齢による社会からの引退を許さないようにすることだろう。

あとは、中華人民共和国が人民解放軍を使って周辺国に侵攻せんとする野望を放棄させるために、周辺国の包囲網を作り上げることである。フィリピンやベトナムが破られたときに、日本が傍観すると思われてしまっては中華人民共和国の思う壺である。日本としては独力で中華人民共和国を牽制出来る水準の軍事力が必要になるだろう。そのためには、おそらくGDP比2~3%くらいの軍事費が必要となろう。さらに、中華人民共和国を包囲している国のうちどの国が人民解放軍の侵攻を受けた場合でも、残りの国が自動参戦すると相手に思わせるために、周辺国で軍事同盟を結ぶ必要がある。だが、そのためには憲法上明確に集団的自衛権を容認する必要がある。集団的自衛権と言うと何か怖いもののように喧伝されているが、個別的自衛権一本槍の方が費用もかかるし、かえってフィリピンやインドネシアといった周辺国の不安を招くはず。

また、中華民国が日本とフィリピンの間に割って入りかねない位置にあり、国共合作をまたやられてはたまらない。日本としては台湾独立派に頑張って台湾国を建国してもらいたいところだが、こればかりは台湾の内政問題なので日本が干渉するわけにはいかない。

だが、今言ったどれを取っても実際には実現困難だ。しかし、しつこいようだが、日本人としては中華人民共和国に支配される未来は受け入れられない。

あたかも本日総選挙が告示された。筆者が各政党に期待する政策としては、

  • 防衛費と自衛官の定員の大幅増強
  • 相続税以外の全ての税(特に消費税、所得税、法人税)の税率を15~20%に統一し、フラットタックスを実現(富裕層が逃げたり節税や脱税に血道を上げる国は良くない)
  • 憲法改正による集団的自衛権の明確な容認
  • TPPへの完全参加
  • 経年30年未満の原子炉の再稼動
  • 社会的公正の実現のために必要なILO条約や勧告の受け入れ(一生働く気になる社会を作らなければ日本の未来はない)
  • 社会的公正の実現のために同一労働、同一賃金の原則の確立(逆に、不安定雇用を考慮すると非正規労働者のほうが額面が高くても良いはず。医師の給与は昔からこうなっている。)

何だか左右両翼の主張が混ざってしまったが、これらが実現するのなら、消費税15~20%、将来の年金の半減を容認しても良いと考えている。そのくらい中華人民共和国の最近の動向は日本に相当の覚悟を強いていると考える。なにしろ、中華人民共和国は尖閣諸島や沖縄について、「(第二次世界大戦の)敗戦国が戦勝国の領土を占領するとはけしからん。」と平気で日本を名指しして言ってのける国なのである。