実名?匿名?仮名?

ブログが実名で記載されるべきなのか、匿名が良いのか、仮名(ハンドルネーム)が良いのかと言った論争は終わりがない様で、何かをきっかけにして蒸し返されては盛り上がるということを繰り返しているように見えます。

しかし、議論そのものには新展開はない様で、結局は実名、仮名、匿名のメリット、デメリットは【絵文録ことのは】の松永さんが匿名・仮名・実名論についての悪魔の辞典(ポイント整理)で述べていらっしゃることに尽きるように思います。

氏の著書であります『ウェブログ超入門!』からの引用部分に、私自身の認識と完全に一致するものがありましたのでさらに引用いたしますと、

そもそも、英米圏では実名主義が主流です。ですから、ウェブログも実名でやるというのが当たり前のようになっています。もちろん、ニックネームで運営されていても、プロフィール欄を見れば本名が書いてあることが多いのです。

この「実名主義のウェブログ」が日本に上陸してからしばらくのうちは、主にIT関係者や学生がウェブログの執筆者でした。つまり、「インターネット初期のユーザー」と非常に近い層によって書かれていたわけです。そうなると、当然のように実名でのウェブログが大半を占めていました。

【絵文録ことのは】の松永さん著『ウェブログ超入門!』 より

とあります通り、私はブログは実名主義の文化だと思っておりました。そして、ウェブ日記はブログよりは実名性が少なくとも良いので仮名でも許されると考えておりました。

しかし、時代が下るにつれ、匿名性を求める意見が優勢となってきており、はてなの住所登録問題に見られるように、ブログツールの提供業者がユーザーの住所を非公開で管理することにすら拒否反応が出るような状況です。

ですが、実名あるいはリアルとの紐付けを伴う仮名を求めることに対する、「言論の自由の圧殺」、「プライバシーの侵害」、「犯罪の誘発」と言う批判が今ひとつピンと来ないのです。

私自身の経験では、ネット上にさらした実名とプロフィールが仇になって何か面白くない事態が起きた、という経験はあまりないのです。むしろ、リアル世界での同窓会名簿の流出の方がよほど危険です。不良な不動産のセールスを仕掛けられたり、ありもしない債務の弁済を督促されたり、虚偽の情報によって商品の先物取引を勧誘されたりしたことが何度となくありました(幸い被害は回避可能なものでした)が、それらはすべてリアル世界に属するルートからの個人情報の流出(正しい情報も間違った情報もありました)がきっかけでした。

攻撃側(セールスを仕掛けたり犯罪を仕掛けたりする側)の立場から考えてみれば、ブログにいくら所属や職業が書いてあっても、そこから裏を取る面倒な作業をするよりはリアル世界で医学部などの同窓会名簿を手に入れて攻撃の対象者を選定した方がはるかに効率がいいわけです。また、住基ネットにある個人の識別情報は元々プライバシーとは見做されていないようで、市役所や区役所に行けば住民票を入手することなど造作もないことです。また、普通に職業生活を送っていれば、自分の実名と所属を看板に出して日々暮らしているようなものです。そんな中、ネットで晒す個人の識別情報にだけ過敏になってもバランスが取れていないように思います。

ただ、ブログでは筆が滑って個人の識別のみにとどまらないセンシティブな個人情報をつい書いてしまいがちなのも確かなので、実名あるいは仮名であっても実名との紐付けが容易な場合、常にある種の抑制をもって文を書かないといけなくなるので窮屈だというのは理解できます。ですから、今実名を使っておらず、かつ仮名の実名への紐付けを行っていないブロガーに対し実名の表示あるいは実名への紐付けを勧めるつもりはありません。

しかし、少なくとも「実名には売名以外のメリットがない」ということは言わないで欲しいと思います。売名とは関係なしに実名をごく自然に使っているブロガーも意外と多いことを考えて欲しいのです。売名など意識したことのない者にとって、そのような非難は胸に突き刺さるものがあります。