今回のウクライナ侵攻で保守なのになぜロシアを支持する者が居るのか

ロシアがウクライナに武力侵攻を行ってほぼ一か月になりますが、ロシア非難一色になるのかと思いきや、Quoraや一部保守界隈において根強いロシア支持の発言を見かけます。現在もなお、長期戦ではロシアが勝利すると主張する者も少なくありません。また他方、トランプ支持者の間ではプーチン支持が根強く、彼らにとってはウクライナの独立よりも反民主党、反バイデンのほうが重要であり、あたかもプーチンのロシアがディープ・ステートに対抗する頼もしい味方かのような物言いすらあるそうです。

そんな中、「ツイッターでどのようなアカウントがロシアの主張通りウクライナ政府はネオナチであるというツイートをしているのか調べてみた」、というYahoo! Japanニュースの3月7日付け記事「ツイッター上でウクライナ政府をネオナチ政権だと拡散しているのは誰か」を見かけました。

この記事によると、クラスター分析の手法で

  • ロシアの侵攻について言及したもの
  • 戦争に反対するツイート群
  • ロシアを批判するツイート群
  • 「ウクライナ政府はネオナチである」というロシアの主張を拡散しているツイート群

をそれぞれ取り出せたとのことで、最後のクラスタである「ウクライナ政府はネオナチ」というロシアの主張に沿ったツイートを拡散しているアカウントを分析しましたところ、これらのアカウントは反ワクチン系のツイートも拡散しているアカウント群であることが分かったとのことです。

この記事では、「ロシアによるウクライナ侵攻とワクチン接種という直接的には関係のない二つの事象について特徴的なツイートを拡散するアカウント群が重なっているということには一定の意味がある」という考察がなされていました。さらに、最後のクラスタでは他に比べてQアノンを支持する傾向も見られたとのことです。

反ワクチンとプーチン支持、Qアノンとくると、何だか一定の傾向がありそうな感じがします。具体的には、アメリカの宗教右派、一部共和党支持者の在り様がイメージされます。Yahoo! Japanニュースの3月25日付け記事「ロシア情報戦に『Qアノン・反ワクチン』が接近…人が自らフェイクを求める理由とは?社会への不信の行き先」ではその要因を、

つまり、アメリカにおいては宗教右派、福音派のような人々にとって、バイデン大統領率いるアメリカ政府とウクライナが悪巧みをしているという情報は、真偽に関わらず大変好都合なのです。

なぜなら、自分たちは「善」の側であり、「悪」は反キリスト的な振る舞いや、伝統的な家族観の破壊を推し進める側であることに疑問の余地はないからです。

金儲けと強欲がはびこっているように見える市場経済や、機能不全に陥っているように感じられる民主制が、自分たちの実存を脅かすものと捉える立場から見た場合、陰謀論は自分たちを納得させる認知的な整合を図るための格好の役割を果たします。

「ロシア情報戦に『Qアノン・反ワクチン』が接近…人が自らフェイクを求める理由とは?社会への不信の行き先」より

と述べています。

正直言って、今回のウクライナ侵攻で保守なのになぜロシアを支持する者が居るのか、と困惑しました。日本では反共という一点において反米保守主義者と親米自由主義者が団結して自民党を結成し、結果として伝統的価値観(天皇制)を守っている、という事情があり、保守とは自由と民主主義、民族独立の守り手であるというイメージがありますが、よく考えると反米保守の伝統主義者が親米保守の自由民主主義者と手を組んでいる日本の事情が特異なのだと思われます。

日本にも反米、反グローバリズム、反自由主義の保守主義者が少なからずおり、アメリカの福音主義者や宗教的保守主義者、反グローバリストと同じようにトランプ氏やプーチン氏との連帯感を表明する者が居ても不思議ではないことが今回の事態で分かったような気がします。

しかし、私としては民族の独立と自由は不可侵の価値であり、そういう意味では民主党のバイデンや宏池会の岸田総理は珍しく良い仕事をしたと思います。どういう事情があったとしてもウクライナの独立と自由は不可侵であり、台湾と日本にとっては明日は我が身。この状況でロシアを支持するのは保守といえども全体主義者の所業と言わざるを得ないと考えます。