集団的自衛権に対する曲解と誤解が酷過ぎるようだが

集団的自衛権について反対する人の中にも、自衛権を一切認めないという立場から、個別的自衛権は認めるが集団的自衛権は駄目だという立場まで、色々あるようだ。その中で、個別的自衛権一本槍の人が意外と多いのが目につく。しかし、これはかえって危険な考え方であると思う。

個別的自衛権はあるが集団的自衛権はないという考え方に立つと、

  1. 軍事同盟に参加する場合に比べて重装備になる。NATOのベンチマークはGDPの2%だそうだが、同じ効果を単独であげようとすればGDPの5%くらいの軍事費が必要になってしまう。中華人民共和国や北朝鮮同様の防衛費に耐えられるとは思えない。
  2. 同じ理由で、日本が核武装すると思われてしまう。憲法9条なんか空文だというのは世界に見透かされている。一国ではアメリカの第7艦隊と互角の海軍力に過ぎないが、それでも世界2位の海軍大国なのだ。やるときはやると世界は見るだろう。
  3. 政権交代で簡単に敵陣営に寝返ると思われてしまう。日米安保条約が機能しない状態であれば、いつ日本が中韓枢軸側に寝返るか分かったものじゃない。フィリピンやベトナムあたりが日本に対し恐怖を感じるとは思わないのだろうか。

いかなる軍事同盟にも参加していない状態であるから、戦争に対してフリーハンドと思われてしまう。繰り返しになるが、フィリピンやベトナムあたりが日本に対し恐怖を感じるとは思わないのだろうか。

もしかすると、共産党あたりは政権奪取の暁には自衛隊を奪取してアメリカと戦争できる軍に改組したいと思っていて、それを狙って集団的自衛権について反対しているのではないかと勘ぐってしまう。もし集団的自衛権に支えられた軍事同盟に加入していれば味方から制裁を食らう状態でも、個別的自衛権しか保持していなければフリーハンドである。危険でしょうがない。

多国間軍事同盟に参加していれば、裏切り行為はそうそうできるものではないから、欧州によくある社民主義的政権が出来ても外交と防衛の基本はぶれないから少しは安心できる。そうであれば政権交代の目も出てくるというのに、日本の野党はその辺が全然分かっていない。この分では当分自民党しか投票出来る対象がない。困ったものだ。

追記

個別的自衛権を封じられて集団的自衛権しか行使できないドイツと、個別的自衛権一本槍で集団的自衛権を行使しないスイスを比べて欲しい。同じ条件ならどちらが負担がきついだろうか。ちなみに、日本は海洋大国だから、アメリカの第7艦隊二つ分(第7艦隊とそれと同等の実力を持つ海上自衛隊の両方)でようやく領海とその周辺を防衛しているのが現状である。日本が独力で海上自衛隊を2倍以上の戦力にできるとは思えない。山国のスイスとは事情が違い過ぎる。