吸入による内部被曝を年齢別に評価する

放射線医学総合研究所のウェブサイトにある、「放射線被ばくに関する基礎知識 第6報」という文書に、ヨウ素131、ヨウ素132、セシウム137、セシウム134について、吸入による内部被曝を生じた場合の年齢ごとの実効線量係数と呼吸率が出ていた。放射性物質の吸入摂取による内部被曝の評価には実効線量係数と呼吸する量の双方が利いて来るので、このような資料は大変有用と考えられる。なお、元資料はICRPのものである。

試算として、ヨウ素131を吸入した場合について実効線量係数と呼吸率の積を年齢別に比較してみたものを下表に示す。なお、比を示すのが目的なので単位は割愛した。

年齢実効線量係数呼吸率前2者の積成人を1とした比率
3ヶ月0.172.860.491.1
1才0.165.160.831.9
5才0.0948.720.821.9
成人0.02022.20.441.0
図1 ヨウ素131の場合

この計算結果から、同一の濃度のヨウ素131を吸入した場合、幼児は成人の1.9倍の被曝をしてしまうとおおよそ推定できる。もちろん大雑把な推定値であるが、この核種の場合、幼児が大気を吸入することによる内部被曝は成人よりも大きいことには十分な注意が必要である。

このことは最初から言われていたことであるが、このように数値で示してもらうと非常に納得できる。

追記

セシウム137について計算してみると、ヨウ素131の場合と異なり、成人の方が影響が大きくなるという結果になった。乳幼児の実効線量係数がヨウ素に比べて差が少ないため、吸入量の差がより影響する結果となったためである。ヨウ素とセシウムの体内動態の差異が実効線量係数に織り込まれているものと思われる。

年齢実効線量係数呼吸率前2者の積成人を1とした比率
3ヶ月0.112.860.310.36
1才0.105.160.520.60
5才0.0708.720.610.70
成人0.03922.20.871.0
表2 セシウム137の場合