日本経済の現状と国債について考えたこと

現在の日本経済は非常に危なっかしく、しかも歪んだ状態なのに、それでも持ちこたえているのが不思議な状態である。特に、積み上がった国債残高は時限爆弾さながらの状態である。この問題について考えていたことを次に列挙する。

  • 民間部門と企業のバランスシートの毀損を埋め合わせる役目を政府がしている現状では、短期的には国債の大量発行は不可避。
  • 現状では金融機関が国債を買うしかない状態なので、綱渡りの財政運営が出来ている。
  • 今の日本にとって一番怖いのは国債が消化できなくなること。
  • 財政破綻を免れているのは円高、デフレ、低金利のおかげ。日本経済は皮肉にも景気回復させてはいけない状態。
  • 景気回復で国債以上に魅力的な投資先が出てきた時が危ない。政府と民間は別の存在なのだから、国債購入を強制することは出来ない。
  • 日本はもっと国債を出せるという人は、国債を税のように強制購入させられると思っているか、政府資産の流動性を過大評価している。
  • 日本の公共事業の水準はすでに十分低下しており、防災のためのメンテナンス費用にも事欠くほど。
  • 日本の国家公務員は他国に比べても多くなく、これ以上減らすのは困難。
  • 日本の租税負担率は非常に低く、しかも政治的に増税はほとんど不可能。
  • このままでは将来の選択肢は次の二つのみ
    • なんでもいいから遮二無二増税
    • なんでもいいから無理やりインフレ
  • 本当は遮二無二増税と無理やりインフレの中間に最適解があるはずで、せっかく菅内閣発足当初には消費税増税容認の雰囲気もあったのだが、現状ではすべてがぶち壊しになっている。

以上のようなことを考えていたら、「たったひとつの冴えぬ気まぐれ」の2010年7月17日付のエントリー「日本の国家財政と資産の現状について」のコメント欄に興味深い議論があった。抜粋して引用すると、

民間主体と政府主体の関係は相互依存体制であり、債権債務では片方が正ならもう片方は負の関係にならざるを得ないのです。だからいくらでも借金できるわけではもちろんありません。バランスが重要なのです。
今の日本で取り付け騒ぎが起きないのはなぜか?いろいろありますが、信用崩壊が始まっていない段階では、実はデフレなのです。デフレであれば、何もしないでも預金の価値は上がっていってくれますから、「価値が減る前に早く使ってしまおう」という意思決定を抑制してくれます。
つまり、今の借金大国日本を支えてくれているのはなんと悪玉コレステロールのように忌避されている「デフレ」様なのです。
そして他の国家が穴埋めしてくれないのなら、自国内で処理するしかありません。
私は、
A:超低成長を覚悟した大増税での穴埋め
B:強引なインフレ政策でご破算
のどちらかしか基本的にはないと考えています。
ABの中間的政策が一番ですが、余りの借金の巨額さ故に、ちょっと間違えばBという極めて難しい舵取りが要求されます。
日本人は気持ちはAでも選挙ではそうなりません。どう転んでもBに至るでしょうか。
どこの政治家も景気回復させる!と豪語しますが、実は、もう景気回復させてはいけない体質に日本はなってしまったのです。
国民負担率があまりに低すぎます。特に高齢者は恩恵だけ受けて逃げ切るつもりでしょう。この世代間格差は断固として早期解消しなければなりません。

たったひとつの冴えぬ気まぐれ「日本の国家財政と資産の現状について」のコメント欄 より

おそらく、現状の緩慢な衰退が日本にとっての最適解で、この程度の不況で済んでいるのが奇跡のようなことなのでは、と思われてならない。増税とインフレ、どちらの形で時限爆弾が爆発するか、非常に怖い状況である。この不況下に投資用マンションを買い漁っている人がいて、一部の地方銀行が積極的に融資しているのだが、もしかすると将来をハイパーインフレと見ているのかもしれない。