政府の累積債務について考えたこと

政府の累積債務についてですが、財政再建、増税容認派に対する批判としてよく出されるものに、

  • 国家財政は家計のように黒字化しなくてはいけないものではない
  • 日本国債は国内で消化されているから国家単位ではバランスシートを毀損しないので大丈夫

といったものがあげられます。

しかし、政府だから家計と違って政府の純資産、あるいは国民が保有する金融資産の限度一杯までいくらでも国債を発行できるかというと、そういうものではないはずです。現状は政府以外のすべてのセクション(企業や家計)が投資や消費よりも内部留保や貯蓄を優先していて、かつ国債以上に魅力的な投資先がないからこそ、たまたま国債が売れているだけです。国債以上に魅力的な投資対象が出てくれば、たちまちのうちに国債は消化難に陥ることでしょう。最悪、外国の債券の方が投資対象として魅力的になれば、資金が海外に流出してしまってお終いになるかもしれません。また、現在の国債の大量発行は企業や家計のバランスシート調整のしわ寄せを政府が被っているという面はありますが、いつまでもそれが続けられるはずはありません。企業の格付けがAAなのに政府の格付けがBBなどといった状態は存在し得ないからです。

ですが、今の環境で増税して政府までもがバランスシートの調整に走ると、国際収支の巨額の黒字がないとつじつまが合わなくなってしまうはずです。日本の租税負担率が低すぎる点の是正は必要ですが、それを是正できる環境を作るためには企業が内部留保よりも投資を多くするようになるか、家計が貯蓄よりも消費を多くするようにならないとなりません。そのためには日本経済の成長期待値が大きくプラスにならないといけないのですが、そこで邪魔になるのが少子高齢化による人口オーナス状態となります。

人間が順番に年を取っていく存在である以上、人口についてはかなり先までほぼ正確に未来予測が出来てしまいます。2030年くらいまでの日本の苦境はすでに織り込み済み、容易なことでは経済成長できそうにありません。もしかすると、すでに

  • どんなにデフレが悪化しようと遮二無二増税
  • 戦争を起こして究極の無駄遣いをなし、国債を中央銀行に大量に押し付けてハイパーインフレを起こす

の二者択一しか残されていないのかもしれません。もしかすると、増税が消費税率が25%位になるだけで終われば御の字、ということなのでしょうか。そう考えると、気分が憂鬱になってしまう今日一日でした。

追記

公務員の給料を20%くらいカットすればすべてが解決するではないか、という意見もあるかと思いますが、これは(複式簿記的な発想をすれば)公務員だけを対象とした増税をして給与と税金を両建てにすれば同じことですので、増税に含めて考えています。ちょっと乱暴な考え方ではありますが。