敵対していても平和的な関係を作ることは出来る

表題は地政学の教えるところですが、今の中国、韓国、北朝鮮との関係を考えるのにこれほど適切な言葉は無いと思います。日本人の悪い癖で、全ての国と友好的で仲良くしていないといけないように思ってしまいがちですが、隣国とは基本的に敵対関係にあるものであり、唯一の例外は共通の敵があるときのみ同盟関係が成り立ちうるものです。田中角栄元総理の時代には、日本と中国にはソビエト連邦という共通の敵があったことを想起すればこのことは容易に理解できるでしょう。

しかし、今の日本と中国は軍事的には完全に敵国の関係にしかなり得ません。(何故か台湾を無視して)国境を接する国が全部日本の敵になった、とマスコミは騒ぎ立てますが、地政学的にはむしろ当然のことです。その代わり、日本の敵国である中国、北朝鮮、韓国、ロシアを囲む諸国はすべて日本に好意的です。ウクライナ、ポーランド、ウズベキスタン、カザフスタン、インド、インドネシア、ベトナム、……。典型的な遠交近攻状態が成立しています。

ですが、敵国同士である日本と中国との間には現実に経済的な依存関係があり、決して対立一方ではありません。靖国問題で騒いでは居ても、一定の自制が働くようです。敵国ではあってもそれなりに平和的な関係が保たれている結果、現在の経済的相互依存(むしろ中国が依存度大)状態があるのでしょう。

もっとも、中国が今のままの軍拡を続け、台湾の武力制圧が可能になった時点で現在のそれなりに平和的な状態は崩壊の可能性がありますから、ゆめゆめ準備は怠ってはなりません。あくまでも敵国との関係であることを忘れてはいけません。集団的自衛権を躊躇わずに行使できるようにするための憲法改正は基本中の基本です。

何れにせよ、日本人は敵国が存在することそれ自体にもう少し慣れなくてはならないでしょうし、敵国との関係のあり方についても訓練される必要があるでしょう。モンゴルやベトナムほどつらい地政学的位置にいるわけではないのですから、このくらいのことで狼狽してはいけません。

敵対していても平和的な関係を作ることは出来るのです。ほとんどの国がそれに腐心しているのです。友好国と仲良くするのが外交ではありません。仲が悪い敵国と喧嘩しながらも対等の平和的関係を模索するのが外交であるはずです。その意味では、中国との外交はまだまだ序の口なのです。