民間部門での自浄作用はやはり必要

小倉秀夫の「IT法のTop Front」:2004年11月17日にこんな一節がありました。

民間の通信部門への公権力の介入をなるべく防ぐには、民間部門での自浄作用が必要です。しかし、はてなの規約改正問題やLivedoorの削除問題で利用者がとった行動をみると、他の同種業者は自浄作用を働かせるべく様々な方策を練り実行することを躊躇することでしょう。近視眼的には、何の自浄作用も働かせず、かえって、利用者が匿名性のもとで違法行為をしやすい環境を整えた方が会員も増えるし、コストも抑えられます。そして、一部の煽動者は、そのような違法行為をしやすいサービスへと多くの利用者たちを導こうとすることでしょう。そして、それは、インターネット上での表現行為に対する公的規制への国民の支持を増大させることに繋がります。

小倉秀夫の「IT法のTop Front」より

今回のはてなやライブドアでの騒動を見ていますと、ネットワーカー(死語)の意識が一般人とだいぶずれているのでは、という感じがしました。世間の一般人はネットワーカーをかなり冷ややかな目で見ているのは間違いなく、公権力による規制を望んでいるような感じがしていましたが、どうやら小倉弁護士も同様の危惧を抱いていらしたようです。

このまま多数の者が匿名性の陰に隠れた傍若無人な行動をネットで取りつづけ、それがネットを支配する雰囲気になっていった場合、警察などの介入を望んだり、ネット社会の崩壊を望んだりする論調が(今でも多少目に付きますが)支配的になり、本当に公権力の介入で何にも物が言えなくなったら元も子もありません。

ここは頭を冷やして、過剰な匿名性という幻想から目を覚ますことが必要だと思います。

2ちゃんねるも真っ青の無法地帯では恐くて何も言えなくなってしまいますし、そのために公権力の介在を招いたのではやはり何も言えなくなります。どちらにしても言論の自由はなくなってしまいます。

今回はてなが提案した住所登録の意義としては、民間部門での自浄作用の一環として、普段は仮名でも良いからいざという時のために身元が分かるようにしておくことで、言論空間を自主的に管理することにつながることだと思います。それは不当ではない考え方だと思うのですが、如何でしょうか。