NATOもG7も案外脆いのかもしれない

軍事同盟のあり方として、

  • 孤立主義(例:非同盟主義、北朝鮮、……)
  • ハブ&スポーク型(日米+米韓+米豪+……)
  • ネットワーク型(NATO、……)

が考えられるが、日米同盟破棄、個別的自衛権一本槍という左右両翼の方が大好きな議論は孤立主義の最たるものである。まともに防衛しようとすればGDPの5%以上のコストがかかり、コストを嫌って非武装中立などとやってしまうと間違いなく外患誘致になってしまう。いくらこちらが中立を宣言しても、中立国の責務を果たすだけの軍事力がなければ、敵は我が国を蹂躙して自由通行するだけである。第二次大戦の時のベルギーのようになってしまうのが落ちである。

現状のアジアの軍事同盟はハブ&スポーク型である。ハブになる国がスーパーパワーのうちは良いが、米国が衰えて内向き志向になった今、その脆さが懸念されている。また、この構造だと二国間同盟の当事国の一方が同盟解消、敵陣営への寝返りを図ると非常に弱体化してしまうという欠点がある。米韓同盟がまさにその状態にあり、いつ韓国が中国に寝返ってしまうか分かったものではない。日本でも、日米同盟を破棄したがっている勢力が「集団的自衛権反対」「戦争法案反対」とやっており、危なっかしくて政権交代させるわけにはいかず、結果的に自民党一強の状態が続いている。

NATOのように個別的自衛権を否定し集団的自衛権のみを認める集団安保体制に一本化することで、偶発戦争や加盟国の暴走を防ぐというのがネットワーク型の軍事同盟で、安定性という点では非常に優れた仕組みである。左右両翼のどちらが政権を握っても、外交と防衛の枠組みは大きく変わらない。こうなれば政権交代があっても外交と防衛は自民党と大きく変わらない。アジア・オセアニアでも日米豪印を核とした集団安保体制が確立すれば、自民党が政権を失ってもパニックにならずに済む、ぜひ日本もこの方向を目指すべきで、そのために必要な防衛費に使うなら、消費税2%上げに相当する5兆円程度の増税も甘受すべきだと思っていた。

ところが、安定的だと思っていたNATOですら、もしトランプ、ルペン、コービンがそろって政権の座に就くくらいの大変動が起これば、その存在が吹っ飛んでしまうかも知れない、という記事を見かけた。その記事によれば、NATOはおろか、G7も吹っ飛んでしまいかねないらしい。

WEDGE Infinityの4月14日付記事「選挙民の“気まぐれ”が 西側世界を崩壊へ導く トランプ、ルペン、コービンが顔をそろえれば……」がその記事である。この記事の末尾に、岡崎研究所による解説があり、

仮に、トランプ、ルペン、コービンが顔を揃えるようなことがあれば、G7はその生命を終えることになります。

WEDGE Infinityの4月14日付記事「選挙民の“気まぐれ”が 西側世界を崩壊へ導く トランプ、ルペン、コービンが顔をそろえれば……」より

という一文で結ばれている。そうなったら……まさに悪夢であり、日本は単独でGDPの5%を防衛費に充てて軍事大国を目指さない限り、滅亡の憂き目にあうことだろう。NATOもG7も案外脆いのかもしれない。