2ちゃんねる起源の「日本の思想対立の構造」という一文より

「依存症の独り言」さんの8月7日付のエントリー「右と左の売国奴」のコメント欄で2ちゃんねる起源の以下のような物言いが紹介されていました。なお、グーグルで検索すると、どうもコピペとして使われていたようですが、なかなか面白いので紹介します。

「日本の思想対立の構造」

朝日が日露戦争をマンセーした事をもって保守化したとか言ってる奴がいるが、日本の思想対立の構造が分かってないな。

日本の対立構造は、

親大陸派(共同体主義、ランドパワー)=親アジア主義、親儒教、親社会主義、親官僚制(=中央集権)、親全体主義、親人治主義、親合理(観念)論、親水戸学、親平田派国学、親朱子学
親英米派(自由主義、シーパワー)=親国際主義、親資本主義、親封建制(=地方分権)、親自由主義、親立憲主義、親法治主義、親経験論、親仏教、親国学(本居宣長)、親徂徠学

なんだよ。

親大陸派は天皇制を認めるかどうかで国家社会主義(親ドイツ)か共産主義(親ソ連)に分かれ、親英米派は伝統の重視の度合いで保守主義と自由主義に分かれる。

今風の言葉で言えば、反米保守は親大陸派で、親米保守は昔ながらの親英米派なんだよ。
両者は戦後、反共産主義という一点で手を組んだ訳だが、元々は水と油。
共産主義が崩壊した90年代以降、元の親大陸派vs親英米派の構図に戻っただけの話。
戦前の革新官僚や軍部の中の国家社会主義者に偽装した共産主義者が沢山いたってのは有名な話で、この両者は天皇の扱いを除いては対立点はないから、転向は簡単。
西部邁、小林よしのりも何度も転向してるでしょ。でも、親大陸派は絶対に親英米派にはなれない。逆もしかり。根本の思想が違う。

で、日露戦争の評価について言えば、「白人に対する被支配者有色人種の勝利」と言う点を重視するのが親大陸派の特徴で、英米日の文明国が専制的(=アジア的)なツァーリのロシアに勝利したと言う点を重視するのが親英米派の特徴。当時の人々はどう思っていたかと言うと、圧倒的に後者が多いだろね。当時の一般の日本人は文明の度合いを肌の色よりも重視した。

このように考えると、朝日が日露戦争を賛美したのは何の不思議も無い。国家社会主義と共産主義の間は容易に転向できる。そのうち、大東亜戦争の「白人支配からの解放」という面について賞賛する日も近いだろうね。そして孫文のアジア主義の訴えだが、中国は伝統的に日本と英米との離間を企てるのに熱心で、孫文は日英同盟にも強硬に反対していた。今の中国の日米同盟反対と同じだな。

これに東洋の王道だなんて感動してる奴は馬鹿としか言いようが無い。

依存症の独り言「右と左の売国奴」のコメント欄 より

これをいささか乱暴に要約すると、次のようになる。

  1. 親大陸+天皇制擁護=反米保守
  2. 親英米+伝統重視強=親米保守
  3. 親大陸+天皇制否定=共産主義者
  4. 親英米+伝統重視弱=自由主義者

この文脈でいけば、1955年体制における保守合同というのは、共産主義の脅威を背景に、本来水と油であるはずの親米保守と反米保守が手を結んだものであり、その脅威がなくなった今、再び親米派と反米派の対立が起きているのは必然、ということになる。

上の表はいささか乱暴な分類のように思われるが、現実の政治勢力や政治家を当てはめてみると、意外と据わりが良い。

  1. 反米保守:国民新党、自民党親中派
  2. 親米保守:自民党親米・親台湾派
  3. 共産主義者*1:社民党、民主党左派
  4. 自由主義者:民主党右派

1&2で出来ているのが自民党、3&4で出来ているのが民主党、ということになる。しかし、反共か容共かが対立軸になり得た時代と違い、現在の対立軸はランドパワーとシーパワー、親中と親台湾、反米と親米、反グローバリズムと親グローバリズム、官僚主義と自由主義といったものに移行している。その意味では自民党も民主党もねじれを抱えており、これをすっきりさせるには政界再編が必要である。1&3で出来た政党と2&4で出来た政党が政権を争うのが分かりやすい姿だと思う。

その意味で今回の参議院議員選挙をみると、自民党側は津島派の大量落選の一方で、安倍さんの肝いりの候補はほとんど当選しており、だいぶすっきりして来た。この意味では有権者の選択眼は正しかったのかもしれない。おみそれしました。

問題は民主党で、旧社会党の左派と自由主義者が相変わらず同居している有様だ。小沢代表をはじめとする執行部は、自民党に対する徹底抗戦を叫んでおり、旧社会党左派をエンジンにして何でも反対、という戦術を取っている。このままではこの先矛盾はさらに拡大する勢いである。政権が目の前にぶら下がっている状態では党議拘束による締め付けも効くであろうから、自由主義者たちは引き続き無力化され、巨大な反米政党として一団となって行動する恐れが強い。早速テロ特措法延長問題でその兆しが見える。

政界を反米主義者、ランドパワー派、親中派に席巻させないためにも、民主党内に相当居るはずの親米派や自由主義者の決起を強く望む。もし民主党議員が目先の解散総選挙の実現に釣られ、テロ特措法延長問題で反米でまとまってしまうようなら、政界再編は見果てぬ夢、さらには日本国は終わりの始まり、ということになりかねない気がする。


*1 共産主義者:共産党よりも旧社会党左派の方がこの立場をよく代表するので、(伝統的)左翼主義者といった方が良いかもしれない。