100歳まで生きがんで……

国立がんセンターに昔、「100まで生きてがんで死のう」と言った人が居る、と言う話を聞いたことがありました。情報源が分からずに居たのですが、琉球新報のサイトにある 2002年6月8日付けの記事「難局打開へ戦略を模索/第17回県経営者大会」に「100歳まで生きがんで死のう/市川平三郎氏(国立がんセンター中央病院名誉院長)」と言う講演を紹介する一項を見つけることが出来ました。

同記事によりますと、講演要旨は、

  • がんと年齢はものすごく関係が深い。長生きするほどがんにかかる。
  • 最近は医療の進歩で80-90代でもがんの死亡率は高くなっている。
  • 長生きしたいけどがんはいやだっていうのは無理な話。
  • 今は「がん=死」ではない。例外はあるが、早期発見で8割は治る。
  • がんになれるくらい長生きしましょう。

と言うものだったそうです。この指摘を待つまでも無く、他の病気でなかなか死ななくなったからこそ、「がん」による死亡が前面に出てくるようになったのです。

もし50歳や60歳で大腸がんなどで亡くなったら、予防医学的には失敗ですが、もし100歳まで、脳卒中にもならず、心筋梗塞にもならず、肺炎や結核にもならず、予防できる病気は全部予防して、死の直前まで普通に暮らし、結果的にがんで亡くなったとしたら、予防医学的にはその人の一生は大成功だと思います。

そして、がんによる死と言うと悲惨なイメージがありますが、超高齢者の場合、他の病気で亡くなった方の方がよほど苦しんで亡くなっているように思います。肺炎、肺気腫などによる呼吸不全、心筋梗塞などによる心不全、脳梗塞などによる寝たきり、みんな病悩期間が長いだけに深刻な問題をもたらし、本人の苦しみと介護者の負担は想像を絶するものがあります。

この発言は、がんで亡くなることが良いことだといっているのではなく、他の病気で足をすくわれることなく、100歳まで健康で長生きしましょう、と言っているのです。確かにそこだけ取り出すと、がんに悩む患者の神経を逆撫でしかねない発言ですが、自分自身は100歳まで健康で生きられれば、その結果として100歳過ぎてがんで亡くなっても良いと思ってますし、なかなかうまい表現だと思います。

ただし、医学界の外側に居る人には理解しにくい、かなり捻った言い方であるのは確かです。「100歳まで生きて」の方に重点があるのですけれど。