廃止路線と乗りつぶし認定

鉄道趣味のジャンルの一つに「乗りつぶし」というのがある。これは、文字通り範囲を定めて全部の路線に乗車する行為のことである。しかし、廃止路線が絡むと、全部の路線を乗らないうちに目的の路線が廃止になってしまうようなことが起こり得る。

このような事態に陥らないよう、廃止が予想される路線にはできるだけ早期に乗っておくように各人努力しているわけだが、それでも特定の廃止路線に乗車出来ないまま、現在営業中の路線の全てに乗車してしまい、未乗路線(区間)が無くなってしまう場合が出てくる。そんな場合に「乗りつぶし」(完乗)を認定できるのだろうか。

私見では、その路線の廃止時期によって扱いを変えるべきと考える。

廃止時期が生まれる前の場合
これは考えるまでも無くセーフだろう。
廃止時期が前事業者から承継前の場合
JRの場合特に問題になるが、個人的にはこれも不問にして良いと思う。
廃止時期が該当会社線の初利用よりも前の場合
その時点では乗りつぶしを志していようはずは無いのだから、これも不問で良いと思う。
廃止時期が該当会社線の初利用より後だが、乗りつぶし開始よりも前の場合
この期間に漫然と廃止線を見送ってしまったという意味では後悔が残るケースだが、鉄道趣味に入ったのが遅い人の場合はこういう場合も多いだろう。あるいは、自分の意志で鉄道を利用出来ない幼児期に鉄道利用が多かったのかもしれない。後悔は残るだろうが、白に近いグレーではないか。
廃止時期が乗りつぶし開始後の場合
これは明らかに敗北である。こうなった後にいくら未乗区間を埋めても、それは単なる消化試合のような気がする。こうなってからでも残った路線の未乗区間が無くなれば、「現在営業中の路線に完乗した」ことには違いないが、敗北感は強く残る。気分的には限り無く黒に近いグレーとなってしまう。

北海道の鉄道について言えば、私が北海道の鉄道を初めて利用したのは1965年7月、4才10ヶ月の時であった。しかし、こんな時点で北海道内の国鉄線乗りつぶしを考えるはずが無い。実際にJR北海道全線乗車を真剣に考えるようになったのは2002年11月、まさか実際に行こうとは思っていなかった釧網本線緑駅と石勝線楓駅(現楓信号場)に行ってしまうという行動に出てからのことである。それからわずか1年後の2003年11月、日高本線様似駅に降り立った時点でJR北海道にはもう乗るべき未乗区間が無くなってしまった。しかし、乗りつぶしに向けて行動開始する前に見送った廃止路線があまりに多く、JR北海道全線完乗を名乗るには気が引けて仕方が無い。特にJR化後かなり経ってから廃止になった深名線の存在が重くのしかかる。今更悔やんでも仕方が無いのだが。

そんな過去の経験が、「乗りつぶし開始前後で廃止線があった場合に、その乗りつぶしは認定できるのか? 」という疑問に繋がった。