少子化対策は育児手当より所得保証で

一人の女性が一生の間に生むと期待される子供の数が、東京ではついに1.00を割り込んだ、とのニュースを聞いた。もし人口の社会的な移動が無ければ、一世代ごとに人口が半分になってしまうわけで、確かに大変な事態である。

これにはいろいろな要因があるのだろうが、経済的なものが一番大きいように思われる。人口が爆発しているような途上国では、低賃金労働者として使える子供の方が職にありつきやすいため、たくさん生んで子供に養ってもらう親がたくさん居るので、言葉は悪いが子供は「生産財」である。このような国ではこどもの権利条約にうたわれている条項など、遠い国の出来事でしかない。ところが、先進国では、子供を育てるのはコストばかりかかるので、親の精神的な満足が子供を産むことの最大の動機になるため、語弊はあるが、子供は「消費財」となってしまう。こうなると、自分の負担に堪えられる人数の子供しか持てなくなってしまう。

しかし、先進国でも、経済的な補助により出生率を上げることは可能なようで、スウェーデンでは所得保証の水準を90%まで引き上げたところ、1.6だった合計特殊出生率が2.0を超えるまでになったが、さすがに財政が持たず、所得保証を引き下げたところ、あっという間に合計特殊出生率も1.5前後に戻ってしまったようである。

さすがに90%の所得保証はやりすぎだと思うが、少子化対策としての経済的な支援の方法としては、育児手当や児童手当よりも、所得保証の方がはるかに有効だと思う。専業主婦よりもキャリア形成に励んだ所得の高い女性の方が、将来子供を産んだときにも経済的に有利になるのであれば、出産と仕事が二者択一になってしまう現状を変える大きな力にもなるのではないだろうか。

専業主婦を余り優遇することは、職業と家庭が二律背反になってしまうような圧力を(女性にも男性にも)かけていることになってよろしくない、というのが私のかねてからの考えなので、配偶者特別控除の廃止、配偶者控除の削減にも賛成である。極端な話、配偶者控除は扶養控除に統合するくらいでも良いと思う。配偶者控除を減らすと結婚する人が減るのでは、と心配する向きもあろうかと思うが、若い夫婦の場合、配偶者控除を考慮するような働き方はしていないと思われ、むしろ税制上の不公平感の解消のメリットの方が大きいと思う。そして、その削減分を育児休暇を有給化する企業に補助金として渡す、というのはどうだろうか。金額的に試算が出来ないので、アイデア倒れになるかもしれないが。

熟練した有能な事務員や看護師が結婚や妊娠を理由に辞めていく現状は、病院にとっても痛いものであり、企業でも同様だろうから、意外とこのような考え方は他の人もしていそうな気がする。

結局、「仕事か家庭か」ではなく、「仕事も家庭も」という方が精神的にも健全に暮らせると思う。