A5完全版3D動作確認情報

HP200LXにA5の画像と音楽を搭載

ノートPC未満のPCでA列車気分

はじめに

「A列車で行こう」はすばらしいゲームですが、PCやPSが無いと遊べません。しかも、PC版のA列車は一貫してその当時のハイスペックなマシンをターゲットに開発されており、モバイルマシンでのプレイは考慮されていません。現在でこそA5が動くノートPCは容易に入手可能ですが、サブノート未満のマシンではやはりプレイすることは出来ません。

しかし、旅先や仕事場にノートPCを抱えて移動するのは余りにも荷物が増えすぎます。電子手帳やPDAだけしか持って歩かない人も多いと思います。A列車にはまりすぎてA5の音楽や列車の走行音が夢にまで出てくるあなた、旅行先での禁断症状の緩和のために、あなたのスモールコンピュータにA列車の画像や音楽を搭載するのは如何でしょうか?

そこで、このページでは「ノートPC未満のPCでいかにA列車気分を味わうか」という点をテーマに、HP200LXにA列車の画像や音楽を搭載する方法について記します。

実験に先立って

今回取り上げたのは、パームトップPCとしては異例の長寿(1994年にデビューし1999年まで生産されつづけた)を誇った、ヒュ-レットパッカード社の逸品、HP200LXです。

このマシンは80186互換CPU(クロック8MHz)、メモリ1~4MB、CGA互換の液晶画面を持ち、タイプ2のPCMCIAを1スロット、ROMでMS-DOS 5のサブセットを持っています。生産終了年次である1999年時点ではおそらく唯一の現役PC-XT互換機でしょう。(PC-AT互換ならCPUは80286以上が条件)もちろん、仮想86モードなんてものは持っていませんし、そのままでは余分なメモリはRAMディスクにでもするしかありません。

こんなマシンが最近まで生き残ったのは、

  • 単三電池2本で時には6週間持つという途方も無い低電力消費
  • なりは小さくとも完全なPC-XT互換機であること
  • 上記から来る自由な汎用性(用途は無制限)
  • HP(ヒューレットパッカード)伝統の電卓やスケジューラの使いやすさ
  • パワーユーザー(廃人とも言われる)の絶大な支持
  • CGAでも日本語化に成功(故にDOS/Cマシンとも言われる)
  • 上記によりV-TEXT対応ソフト資産の継承が可能

MS-DOSおよびDOS/Vの経験が生かせるという意味で、このマシンはPDAというより小さくともPCといえます。ですから、今まで生き残ってきたDOSのオンラインソフトが利用できます。HP200LXとこれらのソフトを用いて、A列車気分を持ち歩こう、というのが今回の実験の目的です。

実験の方法と結果

実験に供したHP200LXは若松通商で販売の、CPU倍速改造+メモリ6MB化されたモデルです。

トップカードをA列車仕様に交換する

今回、一番容易に実現できるのがこれです。HP200LXはシステムマネージャというウィンドウズ3.1のプログラムマネージャにあたるプログラムを持っています。標準ではAUTOEXEC.BATでシステムマネージャが起動される時に、オーナーの名前などとともに640×200のモノクロPCX画像が表示されます。

どのドライブでも良いですから、_DATディレクトリに640×200のサイズのモノクロ2値のPCX画像を置き、topcard.pcxとリネームしてsetupから登録すれば、トップカードを更新できます。

  • A5完全版を起動し、適当な画像を保存する。
    • 好きな3Dビューが切り出せたら時間を止めて、印刷-3Dビュー-ファイル出力を選ぶだけです。
  • 適当なフォトレタッチソフトで画像サイズを640×200に調整し、モノクロ2値画像に変換します。
    • モノクロ2値画像ですと、1ドットに1ビットの情報しかありませんので、ディザリングが欠かせませんが、ディザリング処理前に画像のγカーブを調整しておいた方が良いでしょう。直線的なγカーブをシグモイドな(S字状の)γカーブにしておくと原画像の雰囲気をあまり損なわずにコントラストをはっきりさせることが出来るようです。
    • シャープネスや明るさも調整しておいた方が良いでしょう。
    • 私は画像をPC-UNIXマシンに転送し、gimpという有名なレタッチソフトを使いました。これはフォトショップに迫る機能を持ちながらフリーソフトです。画像関係はマック、というイメージが強いのですが、リナックスでも結構なことが出来ます。
  • 出来たモノクロ2値画像を保存します。保存した画像をPCX画像に変換します。
  • このPCX画像をHP200LXに転送し、C:\_dat\topcard.pcxにリネームします。
    • ファイル転送はフラッシュディスク経由が一番スマートです。母艦(HP200LXユーザー特有の言い方で、HP200LXのために使うメインマシンを指します)がデスクトップでもPCMCIAスロットは容易に増設できます。
  • HP200LXのシステムマネージャが起動した状態で、Setup-F4(Owner)-Alt+P(Picture)の画面から先ほどのC:\_dat\topcard.pcxを指定します。
  • 出来上がりはこんな感じです。ただし、中央部だけ示しました。(左右に長いので両端はカットしました。)ご存知、AR4です。
作成したトップカード画像
図1 作成したトップカード画像

HP200LXでA5のBGMを演奏する

HP200LXにはサウンドカードはついていませんが、音楽を演奏することだって出来ます。本格的にはシリアルポート経由でMIDI音源につなぐことでしょうが、そんな能力も無ければ機材もありません。しかし、HP200LXにはBeep音を鳴らすスピーカーはちゃんとついています。このスピーカーでA5のBGMを演奏できないでしょうか。考えられる方法は次の3つです。

  • *.sndファイルを編集してBeep音を鳴らすことができます。楽譜があれば手入力で何とかなるかもしれませんが、とてつもなく長いファイルになりそうですし、単一の旋律しか鳴らせません。
  • フォーマット0のスタンダードMIDIファイルを用意すれば、LXMIDI(森 治也さん作)というソフトウェアシンセでLXのスピーカーでMIDIを鳴らせます。これが3つの中では音質的には最高だと思いますが、いわゆる耳コピをするか、楽譜を手に入れないとMIDIファイルを作れません。
  • *.wavファイルをLXのスピーカーで鳴らすことが出来るソフトに、WVP(山本 哲史さん作)というソフトがあります。音楽CDから*.wavを作るツールは星の数ほどありますので、技術的には3つの中では一番易しいと思います。

ここでは3番目の方法を紹介することにします。なお、ここで作ったWAVEファイルを他人に公開すると著作権侵害になります。私的利用に留める必要があるため、ツールとやり方を紹介するだけに留めます。間違ってもダウンロードなど期待しないように。(^^ゞ

  • まず、必要なツールを揃えます。
    • 音楽CDから*.wavを吸い出すツール
      • これはたくさんありますが、今回はCD2WAV32(もろぼし☆らむさん作)を使用いたしました。
      • GUIで操作できます。特に解説しなくても大丈夫だと思いますので、説明は省略させてください。(こらこら)
    • BEEP 音源しかないのにWAVE データの再生を行うツール
      • 他にもあるかもしれませんが、今回はWVP.EXE(山本 哲司さん作)を使用しました。
      • フラッシュメモリーからファイルを読み出しながら再生を行うため、大きな WAVE ファイルでも再生できます。
  • A5完全版のCDから*.wavを吸い出します。ファイルはLXで扱うには大きいので、サンプリング周波数は最低の8kHz、モノラルとします。あまりサンプリング周波数を上げるとファイルアクセスが増えて結局きれいに再生できません。鳴ればいいや、と割り切るのがコツです。
  • WVP.EXE本体と作成したWAVEファイルをHP200LXに転送します。フラッシュディスクを使うと良いでしょう。
  • 生DOS に降りていろいろなオプションを試してみます。-Cオプションで音質が変わります。可能な限り小さい値の方が音質が良くなるはずですが、値を余り小さくすると音が飛んだりハングアップしたりします。A5完全版の音がクラシック音楽そのものでダイナミックレンジが大きいためか、CPUに負担がかかるようです。サイクルタイムを標準より相当長く取らないと再生が追いつかなくなります。-Vオプションで音量が変わりますが、これもダイナミックレンジが大きいためあまり大きく出来ません。音量最大の時には音が割れそうなのに、最小の時にはかすかにしか聞こえません。
  • 結局、私の200LXでは次の値が良いようでした。
    • オープニングのテーマ:-C80 -V9
    • 電車・バスのツアー:-C100 -V8
    • ヘリのツアー:-C110 -V7
    • モノレールのツアー:-C80 -V8
    • おめでとう!のテーマ:-C30 -V8
  • パラメータが決まったら、次回からの実行のために次のようなバッチファイルを作成して準備OKです。なお、input.comは番号を選択すると入力した数字をエラーレベルとして返すプログラムです。バッチファイルの本を見れば同じようなプログラムの作り方は載っていると思います。NEC版のMS-DOS(つまり98の世界)ではbatkey.comが同様の目的でMS-DOS3.3から同梱されていました。
@echo off    
:menu  
cls  
echo WAVEファイル演奏JUKEBOX    
echo  1.A5オープニング
echo  2.電車・バスのテーマ
echo  3.ヘリのテーマ
echo  4.モノレールのテーマ
echo  5.おめでとうのテーマ
echo  6.終了
echo ?    
input.com  
if errorlevel 6 goto end    
if errorlevel 5 goto congra    
if errorlevel 4 goto mono    
if errorlevel 3 goto heli    
if errorlevel 2 goto train    
wvp -C80 -V9 a:\wave\a5open.wav    
goto menu    
:train  
wvp -C100 -V8 a:\wave\a5train.wav    
goto menu    
:heli  
wvp -C110 -V7 a:\wave\a5heli.wav    
goto menu    
:mono  
wvp -C80 -V8 a:\wave\a5mono.wav    
goto menu    
:congra  
wvp -C30 -V8 a:\wave\a5congra.wav    
goto menu    
:end  
cls  
echo さよなら    
          
  • 次からはバッチファイルを起動してください。HP200LXがジュークボックスに変身します。はっきり言って音質は悪いです。中学生の時に組み立てた4石AMラジオか、ドコモの昔の携帯電話並みでしょうか。しかし、まぎれも無くA5の音楽です。また、MS-DOSのバッチファイルの書き方を思い出せたという余禄もつきました。

おわりに

以上、曲がりなりにも私のHP200LXにA5の画像と音楽が搭載できました。結果はいささか貧しいですが、出張先や勤務先での時間つぶしくらいにはなりそうです。HP200LXのような非力そのもののマシンでも、アイデア次第でいくらでもA列車仕様に出来そうな感じです。次は本体のA列車仕様でのペイントでしょうか。それともA列車の曲のMIDI化に挑戦でしょうか。

私がHP200LX好きなのでこういう内容になりましたが、本体がプレイできない環境でもA列車、という試みです。意味なし、生産性ゼロ、PCヲタクと言われればそれまでですし、HP200LXに関心の無い方から見ればどうでもいい話ですが、お付き合いいただきましてありがとうございました。。