人間ドックについて

ドック受診前について(その1)

人間ドックについての質問集

はじめに

このコーナーは、読者、勤務先の受診者などからの人間ドックについてのQ&Aのうち、人間ドック受診前についての最初のものです。

質問リスト

  1. ドックに入る前日の午後9時から何も飲食してはいけないとありますが、朝の薬を飲まないと、血圧が210/110mmHg位になってしまいます。薬を飲めば、150/90mmHg位に収まるのですが。(1997/9/21) →問1の答え
  2. 健康診断で胃のX線検査をすることになりました。前の日の午後9時から何も飲食してはいけないとありますが、口が渇いてたまりません。少しくらい水を飲んではいけませんか。(1997/10/23) →問2の答え
  3. 昔、腹膜炎で手術し、手術後、腸閉塞を2回起こしました。入院後手術にはならず、管を飲まされただけで退院しましたが、腸が癒着していると言われました。胃の検査のバリウムは詰まったりしませんか。(1997/11/6) →問3の答え
  4. 今まで大病をしていない男性は何歳から人間ドックにいくのがよいのでしょうか? (1999/5/23) →問4の答え
  5. 1年に1度の健康診断といわれるものは、小学生の身体検査なみの事でかなり不満があります。職種が変わり、最近体調不良な時が多くきちんと検査をしたいと思っています。人間ドックは30歳からとなっていますが、26歳でも受ける事はできますでしょうか? (2000/5/18) →問5の答え
  6. 個人で受診しようと思っているんですが費用とかはどのくらいかかるのでしょうか? (2000/7/5) →問6の答え
  7. 健康診断と人間ドックの違い、人間ドックの利点や不利点を教えて下さい。(2001/3/13) →問7の答え
  8. 人間ドックを受診予定です。前日21時以降絶飲食なのですが、不眠症のお薬は飲んでも良いのでしょうか? (2001/9/16) →問8の答え
  9. 最近体の調子が悪く、会社の健康診断では分からない事もあり人間ドックを受けたいのですが、やはり料金が高額すぎて受ける事が出来ません。早期発見と言う事もあり高額では無いという意見も有るとは思いますが、やはり自分のお給料から一度に何万もの高額な金額を出せません。通常の人間ドックの検査プラス婦人科系も見ていただきたいのですが、そうするとかなり高額になってしまいます。何とかならないのでしょうか? (2003/2/12) →問9の答え
  10. 異常な疲労感があり、一般の診察でよいのか、もしくは人間ドックを受けたほうがよいのか、非常に悩んでいます。(2003/6/30) →問10の答え

Q&A

1番目の質問

問い

ドックに入る前日の午後9時から何も飲食してはいけないとありますが、朝の薬を飲まないと、血圧が210/110mmHg位になってしまいます。薬を飲めば、150/90mmHg位に収まるのですが。

答え

一般論として言えば、人間ドックの存在目的は患者を診ることではないから、そのような明らかに患者のレベルにある人は来てくれるな、と言って断ると言う考え方もあります。しかし、診療側も、現在の病気に関係ないことはやたらに検査できませんから、血圧以外の点はドックで検査するようにと患者に言うこともあります。ですから、これまた一般論ですが、治療によりその病気が一応安定していて、他の検査を受ける上で危険が無いのであれば、患者として通院中の方であっても、その病気以外ではドック受診の対象となると思います。

しかし、質問の方の場合、かなりの高血圧であり、本当に安全に検査が出来るかどうか疑問が残ります。一般に、人間ドックで服薬中断による問題が出やすいケースとしては、

  1. 降圧剤が切れると拡張期血圧が110mmHgを超えてしまう者
  2. 糖尿病でインスリン使用中の者
  3. けいれん発作で抗けいれん薬を服用中で、その薬の半減期が短い場合

等が考えられます。

このような方の場合、現在の主治医にこれだけの確認は必要と思います。

  1. 人間ドック受診の可否
  2. 前日の21時以降当日の10~12時までの14~16時間の服薬中断が可能か
  3. 当日の服薬パターンについて、具体的にどうすれば良いか

具体的な対処法はケースバイケースで一概に言えないのですが、質問の方の場合、当日の朝だけ、飲まずに服用できる薬(舌下錠など)をあらかじめ処方してもらうのも一つの方法です。あるいは、服薬による検査上の影響と検査施行上の安全性を勘案し、当日の朝の服薬と服薬時の水分摂取を許可することも考えられます。

しかし、本当のところ、このような人はドックをまとめて受けることは考えず、必要な検査を時間をかけて受けた方が良いと思います。短時間にいろいろな検査を詰め込む半日人間ドックは、受診者によってはかなりの負担になりますから。

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2番目の質問

問い

健康診断で胃のX線検査をすることになりました。前の日の午後9時から何も飲食してはいけないとありますが、口が渇いてたまりません。少しくらい水を飲んではいけませんか。

答え

「口が渇いてたまりません」という程度まで行ってしまっているということで、水分を取っていないのに多量に尿が出ていないかどうかが問題です。普通は、水分の摂取が無い時や睡眠中には抗利尿ホルモンが働き、尿量を絞り込んで水分の無駄な喪失を防いでいます。これがうまく行かなくなっていて、どんな状態でも尿が多くなっている(多尿)時に水分を制限するのは確かに危険を伴います。水分摂取の多寡によらず多尿を起こす病気には、次のようなものがあります。

  1. 糖尿病で血糖のコントロールが非常に悪い時
  2. 慢性腎不全の多尿期
  3. 尿崩症

また、下痢などで、尿とは関係なしに水分を喪失している場合にも、水分の制限が危険を伴う場合があります。

ご質問のような状態が、このような病的状態に伴うものと思われる場合には、胃の検査は中止または延期し、まずこれらに対する検査や治療が必要です。

そのような状態ではなく、何らかの理由(例えば服薬上の都合、口内炎などによる不快感など)でどうしても当日の朝に水を飲む必要がある場合には、事前に施設にご相談ください。大抵の場合、3時間くらい前に水分だけを飲んだ場合には検査自体は可能です。ただ、バリウムの胃壁への付着が悪くなりますので、細かい病変は分かり難くなる場合があります。

追記

病的な状態ではなくとも、高齢になると尿濃縮力が低下するので、長時間水分を制限すると脱水を起こす可能性があります。脱水状態で検査をするとそれ自体危険を伴いますので、午後12時くらいまでは普通に水を飲んでも良いでしょう。しかし、内視鏡検査なら真水の少量摂取では検査可能性が損なわれないため、高齢の方は内視鏡検査の方がやり易いと思います。若い方と違って咽頭反射も少ないため、内視鏡検査は高齢者に向いているという面もあります。

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3番目の質問

問い

昔、腹膜炎で手術し、手術後、腸閉塞を2回起こしました。入院後手術にはならず、管を飲まされただけで退院しましたが、腸が癒着していると言われました。胃の検査のバリウムは詰まったりしませんか。

答え

胃の検査のバリウムが腸に詰まることはめったにありませんが、腸が癒着しているような人や、ひどい便秘の人、癌などで通過障害のある人では、腸の中でバリウムが固まってしまい、腸管内容が通せんぼになってしまう可能性が無いではありません。このような状態を、バリウムイレウスといいます。ですから、バリウムが腸の中で引っ掛かって固まりそうな人の場合、うっかりバリウムを飲ませると大変なことになります。

このような人を人間ドックの対象にすること自体問題ではありますが、どうしても消化管全体の検査をしなければならない場合、原則として、まず大腸から調べます。下流の方から調べれば、もし引っ掛かっても安全性は高いからです。大腸に通過障害が無ければ、今度は上(口側)から内視鏡で調べます。内視鏡検査であれば、送り込むのは空気ですから、バリウムを流して固まるよりは安全です。

結局、質問に対する答は、このような人の場合、わずかな危険も避けたいのなら胃カメラの方がより安全、ということです。

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4番目の質問

問い

今まで大病をしていない男性は何歳から人間ドックにいくのがよいのでしょうか?

答え

一般的には35歳で1回、そこで大きな問題がなければ毎年受けるのは40歳以後で良いでしょう。しかし、最初のドックで問題があれば、36歳以降も毎年受けた方がいい人もいます。SEなど、運動不足になりやすく、肥満になりやすい職業でしたら30歳で一度受けた方が良いでしょうし、個人差がかなりあります。

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5番目の質問

問い

1年に1度の健康診断といわれるものは、小学生の身体検査なみの事でかなり不満があります。職種が変わり、最近体調不良な時が多くきちんと検査をしたいと思っています。人間ドックは30歳からとなっていますが、26歳でも受ける事はできますでしょうか?

答え

30歳というのはおそらく所属の健康保険組合が決めたものと思います。これは、契約人間ドックに入る際に健康保険組合からの補助が受けられる年齢と言う意味合いを持ちます。ですから、健康保険組合と関係なしに(補助を受けないで)入る場合は年齢は関係ありません。その代わり、全部自分で払うことになるので、一日ドックでも3万円から5万円かかります。と言うわけで、受けられることは受けられるのですが、経済的にはどうかと思います。

また、体調不良ということですと、病気としてすぐに診てもらわないとならない場合もあります。人間ドックまで待てる状態なのかどうかを考えた方が良いでしょう。

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6番目の質問

問い

個人で受診しようと思っているんですが費用とかはどのくらいかかるのでしょうか?

答え

一日ドックで通常4万円前後のところが多いですが、地域差が大きく、愛知県では3万円以下の施設も多いようです。ただし、安いところは検査内容も必要最低限のところが多いようです。

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7番目の質問

問い

健康診断と人間ドックの違い、人間ドックの利点や不利点を教えて下さい。

答え
健康診断と人間ドックの違い

人間ドックも健康診断のひとつといえないことはありません。

ですが、普通の健康診断は個人というよりは集団を相手に、少数の決まりきった項目を流れ作業的にこなすことが多いです。法律、政令、施行細則、通達で強制される場合も少なくありません。学校の健康診断、雇い入れ時の健康診断、定期健康診断、特定の薬物(トルエンなど有機溶剤、はんだなどの鉛、その他)を扱う職場・放射線を扱う職場・炭鉱など粉塵の出る職場などで働く労働者を対象とした特殊健康診断が、代表的な強制力を持って行われる健康診断です。これらの詳細は学校保健法や労働安全衛生法などに規定されています。

これに対し、人間ドックでは個人個人を相手に普通よりも詳しく健康状態を調べる、という要素があります。受診も完全に受ける人の任意です。どんな項目を受けようと、何日間かかって受けようと、受ける人(受診者)とお金を出す人(自腹を切るか健康保険組合が出す)と実施する人(病院や診療所)の契約次第です。受けたくなければ受けなくても構いません。逆にいうと、お金がないと受けられないという面もあります。人間ドックのために年に4万円出せる人は意外と少ないです。

人間ドックの有利な点や不利な点

健康保険や法律の規定に縛られない、自由診療として行えるということは、費用さえ負担できれば納得がいくまで調べることが可能です。しかし、身体を見ないで検査結果を先に見てしまったりして、見れば分かる病気を見落としかねない落とし穴があります。検査にばかり頼りすぎるといけません。

また、契約にある検査であれば、病気でないのに調べても健康保険のように査定を食らうこともないのはメリットですが、裏を返せば、契約にないことは調べられません。

一方、健康保険による診療(普通病気で見てもらうとき)では、病気でないことを調べたらお目玉を食らいます(医療機関が査定を受けて金返せ!ということになります)が、現にある病気に関することならたいていのことは出来ます。人間ドックとはちょうど裏腹の関係になります。

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8番目の質問

問い

人間ドックを受診予定です。前日21時以降絶飲食なのですが、不眠症のお薬は飲んでも良いのでしょうか?

答え

その程度なら大抵は許容範囲と思います。食道に錠剤が残らないよう、200ccから300ccの水で飲んでもらうようにしています。

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9番目の質問

問い

最近体の調子が悪く、会社の健康診断では分からない事もあり人間ドックを受けたいのですが、やはり料金が高額すぎて受ける事が出来ません。早期発見と言う事もあり高額では無いという意見も有るとは思いますが、やはり自分のお給料から一度に何万もの高額な金額を出せません。通常の人間ドックの検査プラス婦人科系も見ていただきたいのですが、そうするとかなり高額になってしまいます。何とかならないのでしょうか?

答え

健康保険組合の補助があるところですと、自己負担は高くても2万円くらいです(ゼロのところもあります)。ただし、規定の年齢に達していることが条件です。

人間ドックの場合、検査の価格的には保険診療の場合の80%以下になっており、これ以上の値下げは本当は難しいのです。補助が出る制度を利用するしかなさそうです。

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10番目の質問

問い

異常な疲労感があり、一般の診察でよいのか、もしくは人間ドックを受けたほうがよいのか、非常に悩んでいます。

答え

基本的には、具体的に症状があれば人間ドックを待たずに直接受診した方が良いのですが、こういう漠然とした症状の場合、原因がつかみにくいことが多いです。保険診療の場合、網羅的な検査は出来ないので、内科を受診された上で人間ドックもお受けになるのも一つの考え方です(両方受けてしまう)。

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