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Maple Leaf Diary -楓葉日記-

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2003-12-13 (Sat)

Updated: 2006-02-08 09:56 by Kaoru Norimoto

[ゲーム] days innocent

(この記事は、「かえで通り17番地」で掲載していたものをこちらに移行したものです。)

プレイ状況

プレイに至る経緯

葉鍵ゲームもLeafの比較的新しい作品である「Routes」と「天使の居ない12月」以外あらかたやり終えてしまい、一段落してからの次の段階として、自分のやったゲームを他の人がどう評価しているのかを知りたくなってきました。レビューサイトをみて回るうち、自分と評価傾向の似ている人が高く評価するゲームの一つとして目に止まったのが、inspireという今はなきブランドのゲームでした。曰く、箱庭世界、マターリとした時の流れ、癒し系、雰囲気に浸れる、「櫻の園」のような世界……。普通のエロゲーとは毛色の違ったゲームらしい、ということが分かります。しかも近年品薄となっていて中古市場で逆に高値になっていると聞き、入手できるうちに試してみようとプレイいたしました。

クリア順

あかり>リディア>ゆりか>睦月

コメント

入手はかなり困難でしょう。新宿のソフマップにはかなり高い確率で置いてあるようですが、入手時は5,120円もしました。ワゴンセールの中身になっていたりすることもあるようなので、評価する人によって価値にばらつきが大きい、つまり人を選ぶゲームなのかもしれません。

シナリオ

このゲームには普通のゲームで言うところの主人公がおらず、マップ画面上で自動的に時間が流れ、イベントが起きるとマップ上に表示が出てくるので、それを選択すると話が進んでいくシステムになっています。プレイヤーは物語世界全体を俯瞰する視点に立つわけです。選ばれたイベントの状況に応じてストーリーが進んでいくのですが、プレイヤーは直接関与することが出来ません。プレイヤーが選べるのは、どのイベントを見るか、そして結果的にどのエンディングに進むのか、という点に限られます。これを神の視点と呼んだ人が居ますが、なるほど、そうなのかもしれません。プレイヤーは受身の立場に立たされるのですが、このゲームのまったりとした雰囲気には逆に合っているゲームデザインといえるでしょう。

登場する少女たちはみな繊細で、過剰なほどにお互いを思いやっています。その上、そのような善意の背後には「自分も傷つけられたくない」という自己愛的なものも潜んでいることにまで自覚的なように思えます。勢い、他者への接し方もおっかなびっくりで、一歩他者の領域に踏み込んでは傷つけてしまったのではと悩み、すれ違いの連続にまた悩む、その心の揺れが描かれています。こういうデリケートな人物の描き方が穂高 望氏の持ち味なのでしょうか。18禁ゲームとしてみれば「White Album」以上に異端かもしれませんが、「White Album」以上に心に届くゲームだと思います。

グラフィック

丸顔の子が多くて書き分けが今ひとつです。シーンによっては睦月と楓が見分けにくいかもしれません。しかし、水彩画風の感触がする絵は嫌いではありません。後の作品のような色っぽさや悩ましさには欠けますが、この作品にはその方が良さそうです。

音楽

アンビエントミュージックといった感じです。このゲームには合っているのですが、慣れるのにちょっと時間がかかりました。

キャラクター

前述したように、どの人物にも壊れ物のような繊細さが感じられます。そして、箱庭のような小さな空間で温かく見守られている感じがします。それはお互いの過剰なまでの思いやりの結果でもあり、周囲の人たちの心優しさの結果でもあるように思えます。

中司 楓

設定上のメインヒロイン。病弱で学校にもほとんど行けずに育ったため、世間に汚されていないおっとりとした無垢な少女という設定ですが、それが違和感なく受け入れられるのは、このゲームがひたすら優しい空間だからなのでしょう。神社の巫女ですが、シリーズ次作の「かえで通り」のヒロイン佳澄とは違って、巫女服を着て登場することは(プロローグとエンディング以外)ありません。睦月とのシナリオは純愛そのもの。公園の木陰で睦月と楓が二人居るシーンが本作での最大のお気に入りです。

琴平 睦月

本当は男の子(ちょっとネタバレ)なんですが、絶対にそうは見えません。どうして睦月が女の子のようになっていったのか、そこに楓がどう絡んでくるのかはネタバレそのものなので書けませんが、本シリーズでもっとも魅惑的で悩ましい存在です。彼女がメインとなる楓、あかりとのシナリオでは、次作「かえで通り」の睦月シナリオとは異なり、ストーリーが進むほどに、楓やあかりを気遣い護る者としての立場がはっきりとしてきます。

俟野 あかり

平仮名ばっかりの台詞が妙に似合う、幼い印象が抜けないゲーム大好き少女ですが、その反面、一番普通の子として設定されています。彼女の使う関西弁が正しいのかどうかはよく分かりませんが、独特な効果を上げています。ヒロインの中では一番親しみやすい子でしょう。

中條 ゆりか

一見高飛車なお嬢様として設定されていますが、本当は対人関係での距離感が苦手なだけでしょう。楓との関係を求めながらも、お互いにおっかなびっくり相手に接してしまい、一歩相手に踏み込んで行っては傷つけてしまったのでは、と悩んで引いてしまう、そのすれ違いの連続がもっとも典型的に出てきているシナリオだと思います。エンディングで二人並んで着物姿で出てくるシーンは本作で2番目のお気に入りです。

リディア

このシナリオだけ、ホームステイ先の男の子との話が進んでいくので、ゆりか&楓シナリオのような倒錯性は余りありません。恋愛感情に気付いていく過程の描写、ちょっとした会話の妙に好感が持てます。外見に反し、あくのない大人しい性格で、その点で楓とちょっとだけ似ています。

採点

  • シナリオ・ゲームデザイン:17/20
  • グラフィック:16/20
  • 音楽:14/20
  • キャラクター:15/20
  • 筆者の好み:18/20
  • 合計:80/100

総評

ちょっとだけ倒錯した、しかしながら優しい箱庭空間で織り成される物語です。おそらく相当人を選ぶでしょう。このゲームが向くのはおそらく、

  • 18禁ゲームにもほのぼのとした雰囲気が欲しい
  • 共依存的な、箱庭的で小さな世界に抵抗がない
  • 「櫻の園」が好き
  • 葉鍵系のゲームに飽きた
  • 女性視点のゲームに抵抗がない

などの人でしょう。しかし、18禁ゲームの物語世界に浸って過ごせたのは「痕」以来です。inspireというブランドが失われたのは実に惜しい感じがします。



平成16年4月11日開設
平成17年4月17日移設
乗本 knorimoto
Website: サイト「楓葉雑記帳」
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