人間ドックについて

検査について(その3)

人間ドックについての質問集

はじめに

このコーナーは、読者、勤務先の受診者などからの人間ドックについてのQ&Aのうち、人間ドックで行っている検査についての3番目のものです。

質問リスト

  1. 月経は、検査のどういうところにどの程度影響するのでしょうか?(2000/1/30) →問1の答え
  2. Ⅹ線で直接撮影ということは、間接撮影もあると思うのですが、この2つは、どうちがうのでしょうか。(2000/4/5) →問2の答え
  3. 心電図で右軸偏位とはどのような状態のことを言うのですか? それと、放って置いても良いものなのですか? (2000/6/26) →問3の答え
  4. 52歳の女性です。今迄は異常なしでしたが今回、総コレステロールが高値で血清脂質が高値と診断されました。因みに値は総コレステロールは244mg/dl、HDLコレステロールは62mg/dl、中性脂肪は67mg/dlです。前回は総コレステロール203mg/dl、HDLコレステロール53mg/dl、中性脂肪77mg/dlでした。そこで質問ですが、中性脂肪が低くなりHDLコレステロールが多くなっても総コレステロールが高くなると血清脂質が高くなってしまうのでしょうか? (2000/6/26) →問4の答え
  5. 父が昨年肺がんで他界し、自分自身も家庭があることから人間ドックにかかってみようと思います。父は毎年人間ドックに入っていたのですが、心臓の真裏の癌だったようで見つからなかったそうです。だからできればMRIで輪切りにしてきちんと診てもらいたいのですが、人間ドックでオプションできるのでしょうか? また、それが可能な病院があれば教えてください。よろしくお願いします。(2000/9/27) →問5の答え
  6. 今年PSAが25で、一応基準以下で特別病院受診の知らせは頂きませんでした。けれど、この間偶然読んだ本に、PSAは10ng/ml以下が望ましいとあり、心配になりました。検診は市町村で行われるもので、単位が記入されておらず、ただ30以上の方は受診するようにとありました。どのように解釈したら良いのでしょうか?(2000/10/13) →問6の答え
  7. 先日30歳になったのを機に町の健康診断を受けました。結果は肝機能の再検査を要す、とのことでした。(GOT 17IU/l、γ-GTP 13IU/l、ALP 98IU/l《これには※印あり》)で基準値内でした。ALPだけ基準値より少なかったのですが、調べてみても値が多いときの情報ばかりで少ないものはどうなのか分かりません。基準値に満たない場合はどうなのでしょう。(2000/11/12) →問7の答え
  8. 眼底検査/眼底写真について質問があります。
    1. 眼底検査から何がわかるのですか。
    2. 眼底写真でHS分類、AV比測定という言葉を聞いたことがありますがこれは何ですか。
    3. 眼底写真を撮影すれば自動的にデータが数値化され診断するのですか。それとも、画像そのものを見て診断するのですか、その場合、診断する人により差は出ませんか。
    4. 眼底検査をする場合、危険はありますか。特に高齢者の場合はどうですか。 (2000/11/12)
    問8の答え
  9. CA99というマーカーは存在するのでしょうか? 15-3、19-9、50、54/61、72-4、125、130、602は耳にしたことがありますが、99は初めてでした。(2001/3/20) →問9の答え
  10. 肝機能検査でChEがありますが、何について測定しているのでしょうか。(2001/3/20) →問10の答え

Q&A

Q1:

月経は、検査のどういうところにどの程度影響するのでしょうか?

A1:

月経の影響を受けやすい検査としては、

尿検査
どうしても尿に血液が混入しやすいので、尿に赤血球や潜血反応が出ても異常とは言えません。出来るだけ月経終了後5日以上経ってからの検査が望ましく、また月経開始2日前にはもう潜血反応が出る人がいます。再検査した方が確かな結果は出ますが、健康保健組合によっては月経による潜血反応陽性と言うと「当たり前だ」と言って健保組合負担で再検査させてくれなかったこともありました。
婦人科的検査
内診や細胞診に血液のため不都合が出る場合があります。
乳房の触診
乳腺が張ってしまって所見が分からなくなる人が居ます。

人間ドックに直接関係あるところとしてはこんなところでしょうか。

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Q2:

Ⅹ線で直接撮影ということは、間接撮影もあると思うのですが、この2つは、どうちがうのでしょうか。

A2:

直接撮影は、撮影対象を通り抜けたX線を直にフィルムやセンサーに当てて感光させます。フィルムやセンサーは身体にほぼ密着させることになります。イメージとしては、印画紙に直に焼き付ける、密着焼きのような感じです。

間接撮影は撮影対象を通り抜けたX線を鏡のようなもので受け、反射したX線で身体とは離れたところにあるフィルムやセンサーを感光させます(フィルムはたいていロールフィルムになっています)。イメージとしては、一眼レフの反射板を通ってファインダーに写った画像のような感じです。

一般の人が分かる一番の違いは、画像の大きさでしょう。直接撮影では胃では10×12インチ(四つ切り)、胸部は14×17インチ(半切)が一般的です。間接撮影では幅12センチのロールフィルムが一般的です。当然ですが、画像の鮮明さも相当違います。

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Q3:

心電図で右軸偏位とはどのような状態のことを言うのですか? それと、放って置いても良いものなのですか?

A3:

心電図で心室の活動をあらわすQRS波のベクトルの向きが左側の真横を向いているときに0度、真下を向いている時90度、右側の真横を向いているときに180度、真上を向いているときに270度(=マイナス90度)として表現したものを電気軸と言いますが、通常これが90度以上120度までを軽度の右軸偏位、120度以上を病的な右軸偏位とします。

高血圧、呼吸器疾患などが背景にある場合もありますが、120度くらいの右軸偏位は12歳くらいまでは普通に見られますし、20代でも軽度のものは中高年者よりはかなり多いです。

放置してよいかどうかは背景に疾患が存在するかどうかによりますが、軽度のものは普通問題にしません。

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Q4:

52歳の女性です。今迄は異常なしでしたが今回、総コレステロールが高値で血清脂質が高値と診断されました。因みに値は総コレステロールは244mg/dl、HDLコレステロールは62mg/dl、中性脂肪は67mg/dlです。前回は総コレステロール203mg/dl、HDLコレステロール53mg/dl、中性脂肪77mg/dlでした。そこで質問ですが、中性脂肪が低くなりHDLコレステロールが多くなっても総コレステロールが高くなると血清脂質が高くなってしまうのでしょうか?

A4:

LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)を計算で推定しますと、前回は135mg/dl、今回は169mg/dlですから、たしかに血清脂質の内容は悪化していると見てよいでしょう。

肥満がなく、生活習慣も変わらないのに急にコレステロールが上がった場合、52歳の女性ということからみて、閉経期による変化の可能性が高いような気がします。50歳前後で20mg/dlから40mg/dl程度数値が上がってしまう人が多いです。このため、動脈硬化学会では閉経それ自体を危険因子の一つと見ています。

しかし、女性の方が心筋梗塞が少ないのにコレステロール値が要注意となってしまう人が多くなるのは非合理だ、ということでこの年齢層の女性はコレステロール値を20mg/dlほど甘く評価する人もいます。50歳過ぎてからのコレステロール値の評価についてはこのように異論がある状況です。

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Q5:

父が昨年肺がんで他界し、自分自身も家庭があることから人間ドックにかかってみようと思います。父は毎年人間ドックに入っていたのですが、心臓の真裏の癌だったようで見つからなかったそうです。だからできればMRIで輪切りにしてきちんと診てもらいたいのですが、人間ドックでオプションできるのでしょうか? また、それが可能な病院があれば教えてください。よろしくお願いします

A5:

ご質問の件ですが、肺癌をご心配ならMRIよりは低線量CTの方が撮影時間も短く(息を1回止めている間にスキャンできるので被写体ブレが少ない)、解像度も高いので肺癌に対しては有力だと思います。地域も分かりませんし、個々の施設の健診内容や診断レベルまで把握しているわけではありませんので、「ここの施設が良い」ということは申し上げられませんが、肺癌検診を低線量CTでやっているところを探せば見つかるはずです。

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Q6:

今年PSAが25で、一応基準以下で特別病院受診の知らせは頂きませんでした。けれど、この間偶然読んだ本に、PSAは10ng/ml以下が望ましいとあり、心配になりました。検診は市町村で行われるもので、単位が記入されておらず、ただ30以上の方は受診するようにとありました。どのように解釈したら良いのでしょうか?

A6:

一般的に、PSAは4ng/ml以上10ng/ml未満がグレーゾーンで要精査、10ng/ml以上が強く癌を疑うレベルとされています。

ところが、PSAの測定キットの中には測定値が他のキットに比べ大きな数値が出るものがあります。その場合、上記の基準が適用できない場合があります。

普通の感覚では、同じものを測定して、ある秤で10kgと出たものが別の秤では30kgと出た、なんてことは信じがたい話ですが、腫瘍マーカーやある種の酵素ではこのくらいの差が出るのは珍しくないのが実情です。

そのため、測定に使ったキットごとに基準範囲が定められているのが現実です。おそらく、自治体の方で採用したキットは数値が高めに出るものだったのではないでしょうか。そうであれば特別心配とはいえません。(それにしてもこんなことでは不便極まりないですし、混乱の元ではあるのですが……。)

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Q7:

先日30歳になったのを機に町の健康診断を受けました。結果は肝機能の再検査を要す、とのことでした。(GOT 17IU/l、γ-GTP 13IU/l、ALP 98IU/l《これには※印あり》)で基準値内でした。ALPだけ基準値より少なかったのですが、調べてみても値が多いときの情報ばかりで少ないものはどうなのか分かりません。基準値に満たない場合はどうなのでしょう。

A7:

ALPは個人差が大きい検査ですし、値が低い場合には病気としての意味はありません。ですから、通常低い側では「異常なし」とします。再検査の必要は特にないと思います。GOT、GPT、γGTPも同様です。

どうして再検査になったのでしょうか……? よく分かりません。

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Q8:

眼底検査/眼底写真について質問があります。

  1. 眼底検査から何がわかるのですか。
  2. 眼底写真でHS分類、AV比測定という言葉を聞いたことがありますがこれは何ですか。
  3. 眼底写真を撮影すれば自動的にデータが数値化され診断するのですか。それとも、画像そのものを見て診断するのですか、その場合、診断する人により差は出ませんか。
  4. 眼底検査をする場合、危険はありますか。特に高齢者の場合はどうですか。

A8:

  1. 網膜そのものの状態(剥離していないか、出血していないか、炎症を起こしていないか等)に加え、血管の変化、視神経萎縮の程度などが分かります。具体的な病気で言うと、高血圧、糖尿病、動脈硬化、脳腫瘍、緑内障、原田氏病、網膜炎など、内科・脳外科・眼科の広い範囲の病気と関連した変化が出てきます。とくに、動脈硬化と関連した病気は細動脈という直径の細い動脈に変化がおきるのですが、眼底の動脈は唯一目で見ることのできる細動脈なので、細い血管の様子を見るには欠かせません。
  2. Hとは高血圧による変化の程度、Sとは動脈硬化による変化の程度を表します。AV比という表現は余り健診では聞いたことがありませんが、Aは動脈、Vは静脈を表しているものと思われます。高血圧性変化が進むと動脈が細くなって、この直径の比率が変わるので、そのことを指していると思われます。通常は動脈の直径が2、静脈の直径が3という比率です。
  3. 本質的には画像診断です。最も主観が入りやすい検査の一つなので、眼科医の経験や能力で大きく差が出ます。
  4. 人間ドックでは蛍光色素や散瞳剤(瞳孔を広げる薬)はまず使わないと思いますので、危険は余りないと思います。

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Q9:

CA99というマーカーは存在するのでしょうか? 15-3、19-9、50、54/61、72-4、125、130、602は耳にしたことがありますが、99は初めてでした。

A9:

私も初耳です。もしあったとしても使われていません。CA19-9は"c-a-nineteen-nine"と普通は読みます。これを"c-a-ninety-nine"と聞いてしまったのでしょうか。ですから、患者に説明する時はわざと「イチキュウ-キュウ」と読むようにしています。

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Q10:

肝機能検査でChEがありますが、何について測定しているのでしょうか。

A10:

ChEとはコリンエステラーゼのことです。神経伝達物質であるアセチルコリンを分解する酵素です。

この酵素の測定が重要になるのは、大きく分けて次の二つの場合です。

有機リン中毒
この場合はChEが極端に低下し、アセチルコリンが分解されなくなって、神経と筋肉の働きがおかしくなり、呼吸が出来なくなって死亡する恐れがあります。サリン事件で紹介されたのをご記憶かもしれません。しかし、健康診断には全く関係ありません。
肝機能検査として
この酵素は肝臓で生産されるので、肝臓の生産能力を示す指標としても意味があります。肝硬変では低下し、脂肪肝等では上昇します。ただし、神経や筋肉の働きがおかしくなるほどには変動しません。

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