人間ドックについて

総合判定の考え方

総合判定のあり方を考える

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人間ドックの結果表には「総合判定」の欄があります。常識的には、総合判定が「要治療」の人の方が「要経過観察」の人よりは健康度が悪いと考えてしまいます。しかし、必ずしもこれが成り立たない場合があります。

一般に、人間ドックの「総合判定」は個々の検査あるいは器官系ごとの判定の中で最も重い判定を選んでつけられています。その人の健康度の平均点ではありません。しかも、一部の心有る施設は別として、検査や診察所見の異常だけが考慮され、検査・診察項目外の症状は余り考慮されていません。

具体的な例をあげてみます。35歳のAさんは毎日煙草を30本は吸う喫煙者である上に、BMIは28kg/m2とオーバーウェイト、血圧は140/92mmHg、総コレステロール238mg/dl、中性脂肪190mg/dl、血糖114mg/dl、尿酸7.8mg/dlと言った具合に、生活習慣病関連項目でことごとく「要経過観察」の判定でした。その上、月200時間の残業に匹敵するほど毎日働いても、裁量労働制を盾に会社は何も手を打ってくれません。それどころか、「そんなに働いても仕事が終わらないのは貴様の能力が低いからだ。」などと上司に叱責される毎日です。休日は疲れ果てて運動どころではありません。一方、60歳のBさんは白内障のため眼科で「要治療」とされましたが、喫煙もしませんし、他の項目には異常がありませんでした。週に4日は40分くらい犬と散歩するのですが、シベリアンハスキーのような大型犬と一緒に走っても息が切れたことなどありません。

この例では、誰がどう見てもBさんの方が健康度は高いと考えると思います。しかし、少なからぬ施設では、個々の検査あるいは器官系ごとの判定の中で最も重い判定ということで、しかも検査結果だけを見て、Aさんの総合判定を「要経過観察」、Bさんの総合判定は「要治療」にしてしまいます。しかし、将来の虚血性心疾患の発症リスクから言うとAさんの方が心配な状態です。(もしかしたら、Aさんは「過労死」して来年人間ドックには来ないかもしれません。)

これは少々極端な例ですが、総合判定が「要治療」の人より「要経過観察」の人のほうが憂慮すべき場合が多々あるのが現実で、注意が必要です。

どうしてこんなことになるのでしょうか。人間ドックの「総合判定」を個々の検査あるいは器官系ごとの判定の中で最も重い判定を選んでつけるというルールを採用したことに問題がありそうです。「要治療」は「要治療」であって、一つでも「要治療」には変わりない、という反論が出そうですが、その「要治療」が健康度に影響をもたらすものなのかどうかが問題です。総合判定と言うからには、その人の健康度を総合的に勘案したものであるべきです。

例えば、月経期間中に尿検査をしてしまったことによる「要再検査」であれば、健康度の判定上は無視できます。また、肥満+喫煙+高脂血症+耐糖能異常+心電図異常+高血圧といった組み合わせでことごとく異常であれば、個々の判定は要注意レベルでも、生活指導だけではなくて「死の四重奏」の組み合わせとして1年に満たない期間での再検査によるチェックが必要になるかもしれません。また、データや診察所見に一切異常がなくとも、ひどい長時間労働やメンタルヘルスを損なっている状態ではやはり「要注意」なり「要経過観察」といった判定が必要だと思います。時には産業医に報告することも勧告すべきでしょう。

結論としては、健康保健組合の集計上の都合ではなく、受診者自身の評価として役立つ「総合判定」であるべきだと思います。