人間ドックについて

上部消化管内視鏡

「胃カメラ」と称されている検査

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別の記事でも述べましたが、上部消化管(食道・胃・十二指腸)の検査としては、X線造影検査と内視鏡検査が主力になっています。最近はペプシノーゲン法、ヘリコバクター・ピロリ抗体も行われるようになりましたが、これらの検査は少し意味合いが違いますので、また稿を改めて解説したいと思います。

通常「胃カメラ」と称されている検査は、正式には「上部消化管内視鏡検査」と呼ばれます。上部消化管と言うのは、食道から十二指腸まで、つまり上の方の消化管、と言う意味です。ちなみに、下部消化管と言うのは直腸を含む大腸のことです。

光ファイバーや器具を通す穴を束ね、直径5~11mm(多くは8~9mm程度)の柔軟なファイバースコープにまとめ、検査を受ける人の口から(最近は鼻からのものもあります)食道・胃・十二指腸に通します。画像はCCDカメラで受け、RGB信号として出力されます。これをRGBモニターで見たり、フィルムに写し込んだり、ビデオプリンターで印刷したり出来ます。CCDカメラで画像を受けますので、覗き込む動作が不要になり、自由な操作が可能になりました。このタイプのものを「電子内視鏡」と呼びます。現在はほとんど「電子内視鏡」に置き換わりました。

ちなみに、昔は検査を受ける人が飲む部分の先端にフィルムを装填するタイプのものがありました。今何処を撮影しているかは術者の勘次第、というフィルム先込めタイプのものを「胃カメラ」、画像をファイバーの束で外に取り出し、カメラは検査する人の目の側にあるタイプのものを「ファイバースコープ」と呼んで区別していたのですが、なぜか「胃カメラ」という呼称のほうが一般的になってしまいました

この検査の最大の特徴は、食道・胃・十二指腸を内側(内腔)から観察できることです。潰瘍でも腫瘍でも直接見えるため、死角さえ出来なければ診断能力は高く、早期胃癌の発見率(感度)はどの検査よりも上です。

胃潰瘍の内視鏡画像
図1 胃潰瘍の内視鏡画像

なお、図1に潰瘍が見える画像の例を示します。圧縮の際に画像が劣化してしまいましたが、実際にはもっと鮮明に見えます。X線造影検査よりも小さな病変でも分かり、X線造影検査では分からない、全く平らな病変でも色が変化していれば分かります。

また、いろいろな器具を通し、胃の内部を操作できますので、怪しい病変は採取して(これを生検と言います)顕微鏡で見て(これを病理学的検査と言います)悪性かどうか調べることも出来ます。同じ要領で採取した胃粘膜の組織を使って、ヘリコバクタ-ピロリ菌が居ないかどうか調べることも出来ます。また、色のついた液体を散布し、微妙な凹凸を際立たせる方法もあり、これを色素内視鏡と言います。

現在の内視鏡は十分柔軟で視野も広く、死角も非常に少なくなりました。また、電子内視鏡は昔に比べて取り扱いが易しくなり、熟練度による診断能力の差はX線造影検査よりずっと少ないようです。

画像処理の面でも、X線造影検査よりずっと有利です。一コマあたり24ビットカラーで640×480で記録すれば良く、非圧縮の場合でも一コマ1MBくらいです。大体1人20コマ保存をするとして、CD-Rでも使えば、100円もしない媒体に300人以上の分を保存できるのですから。しかも、圧縮なしでです! Ⅹ線造影検査の場合、12インチ×10インチの画像を、12ビットの階調を使って、200dpiで非圧縮で保存したら…1人9枚として、どうなってしまうのでしょうか。いくらモノクロでも気が遠くなってしまいます。しかも、診断能力は内視鏡画像の方が上なのです。フィルムレス時代への対応でも遥かに有利です。

ここまではいいことばかりのようですが、ファイバーを身体に入れなくてはならないため、Ⅹ線造影検査に比べて侵襲性(身体をいじめる度合い)も高いのは否めません。咽喉を通る際に反射が出てしまいやすいこと、それを防ぐための麻酔が必要なこと、その場合局所麻酔剤の副作用が問題になること、内視鏡そのもので胃や十二指腸に穴を空けてしまう事故が絶対ないわけではないことなど、問題点もあります。一番大きな問題点は、内視鏡が出来る医師が絶対的に足りないことでしょう。

ですから、検査の性格上、誰にでも健康診断で最初から内視鏡を、というのは目下のところ現実的ではないようです。ペプシノーゲン法やその他の方法で胃癌になりやすい人をまず選び出し、優先的に内視鏡検査が必要な人(胃癌に対しハイリスクな人)を選んで行うようになるのでは、と思われます。それでも20%から30%の人に内視鏡検査が必要になると思われ、内視鏡が出来る医師は当分失業の心配はないと思います。