人間ドックについて

超音波断層検査

超音波断層検査で分かること、分からないこと

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超音波断層検査が人間ドックにおける有力な検査法になって、もう10年以上経ちます。しかし他の検査と同じで、この検査にも得手、不得手があります。

探触子とよばれる身体に直接触れる部分は、腹部の検査の場合、通常3.5~4MHzの周波数の音を出しています。これは人間の耳に聞こえるような音ではないのですが、その音が身体の組織のどの位置からどのくらいの強さで反射されてきたかを瞬時に計算し、その探触子の向きにおける断面像として表示します。超音波ソナーやレーダーと原理はさほど変わりません。

そのような検査ですから、この検査の特徴は、

  • 形態的検査です。
  • 機能だけの異常は分かりません。
  • フリーハンドです。
  • 得意な臓器と苦手な臓器がはっきりしています。
  • 人体への危険はほとんどありません。
  • 太った人、お腹にガスがたまっている人は大の苦手です。
  • 痩せすぎていても探触子がフィットしないので余りいい結果が得られません。

といったものになります。

超音波断層画像の例(肝嚢胞)
図1 超音波断層画像の例(肝嚢胞)

この検査の人間ドックにおける主な対象臓器としては、以下のようなものになります。

  • 頚部(一部の施設のみ)
    • 甲状腺
    • 頚動脈
  • 胸部(一部の施設のみ)
    • 心臓
    • 乳房
  • 上腹部(必須項目)
    • 肝臓
    • 胆嚢
    • 膵臓
    • 腎臓
    • 脾臓
  • 下腹部(一部の施設のみ)
    • 膀胱
    • 前立腺
    • 子宮
    • 卵巣

また、主な対象病変は、以下に挙げるようなものがあり、これらに対しては非常に有力な検査です。

  • ある領域に限局した病変
    • 腫瘍
    • 結石
    • 嚢胞(袋状の構造に液体がたまったもの)
    • 脂肪の一部沈着
    • 石灰化
  • 臓器の形態の異常
    • 臓器の変形
    • 臓器の腫大
    • 臓器の萎縮
    • 臓器の変異・奇形
  • 臓器の中身の異常
    • 線維化
    • 全体の脂肪沈着
    • 血管、胆管の拡張

しかし、苦手な臓器もあります。例えば以下に挙げるようなものです。

  • 胃腸そのもの
  • 手前に胃や腸が来る臓器、そのような部分
    • 膵臓の左側
    • 膵臓の鉤部(右側の十二指腸近辺)
  • 肺そのもの
  • 肺がかぶさる臓器、そのような部分
    • 脾臓の横隔膜側
    • 肝臓の横隔膜側
  • 脂肪が多い場合の、深い場所

また、形や中身の変化を見る検査ですから、次のようなものは分かりません。

  • 形の変化が出るほど進行していない障害
  • 機能面の異常
  • 余りにも微小な腫瘍、結石など(見えるほど大きくない)

一方、諸条件による妨害も受けやすい検査です。気体では乱反射され、脂肪層は反射が大きく、いずれも超音波が届かなくなるため、

  • 胃腸にガスがたまった人
  • 極端に太った人
  • 皮下・腹壁・腸間膜等の脂肪が分厚い人

などでは奥の方が分からなくなります。

また、逆に痩せすぎていて、胸壁の凹凸のため、探触子が密着せずに写りにくいことがあります。

また、自由に探触子を動かせるため、機動性に富み、小さな病変でも探しやすいのは大きなメリットです。しかし、一面、決まった断面での検査が難しく、他の人が記録画像を見ても、結果が分かり難いと言う欠点もあります。

検査しにくい条件ばかり並べてしまいましたが、だからと言ってこの検査の価値が損なわれる訳ではありません。超音波断層検査は小さい病変でも発見できると言う点でCTなどに比べて非常に有利であり、苦手な部分をわきまえて使えば、スクリーニングとしては非常に強力です。直径1cmの肝臓癌が描出可能な位置にあれば、この検査では90%以上発見できると言われます。この大きさの肝臓癌は、CTでは発見できないこともある大きさです。

ですから、人間ドックでは不可欠な検査の一つになっております。ただ、万能ではなく、

  • 受診者の条件によっては、弱点を晒してしまい、余り良い結果が得られないこともあること
  • 形や中身の写り方に異常が出ない病変は、本質的に分からないこと
  • 死角が出やすい場所があること
    • 肝臓、脾臓の横隔膜寄り
    • 膵臓の鉤部(十二指腸寄り)
    • 膵臓の尾部(左側)

以上のようなことを知ってください。その上で、この検査のメリットが生きる部分については、積極的にこの検査を受けて(利用して)ください。