人間ドックについて

基準範囲の考え方

「How to 健康管理」2001年3月号より

本文

基準範囲の定義としては、医学的に正常な人を120例以上集め、その中央部の95%を含む範囲になります。正規分布であれば、平均値±2標準偏差になります。予備校なら偏差値30~70までの範囲、ということになります。

この定義には、病気の人についての内容が含まれていません。病気の人と健康な人が示す測定値の分布に重なりがあれば、基準範囲のなかだから必ずしも「正常」とは限りませんので注意が必要です。

これとは別に、病気の診断、あるいは生活上の注意喚起を目的として設定する値を「カットオフ値」といいます。疾患によっては前述の「基準範囲」内の場合があります。たとえば、総コレステロール値ですと、ある施設の基準範囲(施設によってバラツキがあります)が125~256mg/dl、要注意とするカットオフ値が220mg/dl、といったようなことが起きてきます。これでは受診者にわかりにくいので、「総コレステロールの『基準値』219mg/dlまで」、というように表示している施設が多いようです。しかし、厳密に言えばこれは「カットオフ値」なのです。

つまり、総コレステロール256mg/dlでも現時点では病気でない人もいるはずである(ただし病気の人でもこれ以下の人はいる=重なりがある)が、ある数値以上になってくると将来脳血管疾患や虚血性疾患にかかる確率が高まるのでカットオフ値を設け、それ以下を「墓準値」として早めに注意を促している、という意味なのです。まぎらわしいですが、正しく理解しておいてください。

(以上、「How to 健康管理」平成13年3月号初出、原文のまま)