人間ドックについて

狼少年ではないけれど……

「How to 健康管理」2000年11月号より

本文

人間ドックや健康診断では、同じ異常が何回も連続して「要精密検査」になってしまう場合があります。受診者としては、最初はまじめに受けていても、「二次検査で異常なし」が続くといやになってしまいかねません。

所見に変化がないにもかかわらず「要精密検査」という判定が繰り返される場合、判定の際に過去の結果や二次検査の結果を考慮しなかった場合も考えられます。そのため、受診者からは「二次検査の結果がフィードバックされていないのではないか」というクレームが出ることがあります。健康診断に対し不信感を持つ方ですと、「『要精密検査』を繰り返すことで儲けようとしているのでは」と言ってくることさえあります。

確かに、診断が確定して治療中だったり、症状・所見が完全に固定している場合にまで機械的に「要精密検査」を繰り返しでいたのではこのような批判を受けるのも止むを得ません。しかし、二次検査で常に病変を正確に指摘できるとは限りません。筆者の以前勤務していた病院での例ですが、上部消化管X線造影検査で胃潰瘍瘢痕を認め「要二次検査」となった後、内視鏡検査を4回繰り返し、5回目でようやく癌細胞が証明された方がいらっしやいました。

このような例はそう滅多にはありませんが、同一の病変に対しあえて「要二次検査」を連続して出す場合、このような例も念頭に置いて判定を出している場合があり、その際には「またか」と決め付けずに二次検査を受けておく必要があります。狼少年の話は童話の世界だけのことではありません。

(以上、「How to 健康管理」平成12年11月号初出、原文のまま)