人間ドックについて

基準範囲に近くても判定が悪い時

「How to 健康管理」2000年8月号より

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健康診断では基準範囲から隔たるほど判定が悪くなることが多いですが、それが成り立たない場合があります。通常、基準範囲は医学的に健康な人たちの95%を含むように設定します。集団をもとに求める数値であること、また病気でないことを保証する数値でないことに注意が必要です。

基準範囲に近いほうが判定が悪くなり得る場合としては、第一に、受診者が健康だった時に示す数値の個人差によるものです。個人差が大きいALP、アミラーゼ、白血球数などの検査で起こりやすい現象です。たとえば、白血球数(基準範囲は 3500~9000)が毎年3500前後だったAさんが、ある年8000という数値を示したので、「要再検査」と判定したところ、後日慢性気管支炎と診断された例がありました。一方、毎年12000という数値でもほかの異常が見つからないBさんの場合、「問題なし」とすることもあります。

次にその異常が一過性のものか、連続したものかで判定が変わる場合があります。たとえば、かぜでたまたま出た異常と、何回受けても出る異常とでは判定も違ってきます。

また、異常の原因によって判定が逆転する場合があります。肝炎ウイルスの検査であるHBs抗原やHCV抗体が陰性でも、肥満していて超音波断層検査上脂肪肝の方ですと、80くらいのGPT値(基準範囲は35以下)のことがあります。一方、HCV抗体陽性で毎年GPT値が50くらいで推移し、C型慢性肝炎と疑われる受診者もいます。前者のような受診者には「減量後に再検査」、後者のような受診者には「医療機関を受診」のような判定が出ます。

以上、数値の高低以外の要素により判定が逆転しうることをご理解ください。

(以上、「How to 健康管理」平成12年8月号初出、原文のまま)